素根 “原点”久留米から世界へ!大学退学を恩師が救った

[ 2021年7月31日 05:30 ]

東京五輪第8日 柔道女子78キロ級 ( 2021年7月30日    日本武道館 )

南筑高時代に素根を指導し、現在も同校が練習拠点の素根を見守る松尾浩一監督
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 恩師の温かいまなざしが、行き場をなくしかけた教え子を救った。福岡・南筑高柔道部の松尾浩一顧問(48)は、素根の高校時代の2年間、そして素根が環太平洋大を自主退学してからの約1年間、心身ともに東京五輪への準備をサポートしてきた。

 「大学をやめます」。突然の報告があったのは昨年6月ごろ。新型コロナウイルスの影響で五輪が1年延期となり、練習が満足にできない時期。実家に帰省し、同校を訪れた際、いきなり告げられた。

 実は進学を決めた時から一抹の不安はあった。超級の素根は、高校時代も常に男子部員と稽古。女子柔道部しかない同大への進学に当たり、「練習相手が必要。女子だけのところで心配はないか?」と念押しした。大学側が練習相手を用意する予定だったが、なかなか環境が整わず。五輪延期を機に退学を決断した教え子を、松尾氏は再び受け入れる覚悟を決めた。

 すぐに校長やOB会、教育委員会の同意を得て、金メダル獲得へ全面サポートする態勢が固まった。久留米市はスポーツを通じた教育に力を入れる土地柄で、16年4月には同校にスポーツキャリアコースを設置。柔道や剣道部員が授業時間の一部を部活動に充てられる環境ができ、その1期生が素根だった。とはいえ練習相手は高校生。その点が心配だったが、毎日激しい稽古を繰り返して状態を上げていき、松尾氏の不安を打ち消していった。

 元々、同市内の他校で柔道部監督を務めていたが、素根が2年になる17年4月に赴任。その直後の選抜体重別選手権を高校生として21年ぶりに制し、「こんな凄い選手を指導できるのか」と不安に思ったというが、親身な指導で信頼関係を構築した。だからこそ、自主退学の大きな決断を下し、自身の“原点”から五輪を目指した素根。「大好き」と公言してやまない久留米から、世界の頂点に立った。

 【素 根輝(そね・あきら)】

 ☆生まれと競技歴 2000年(平12)7月9日生まれ、福岡県久留米市出身の21歳。7歳で地元の道場で開始。田主丸中―南筑高―環太平洋大(中退)。今年4月からパーク24所属となり、同時に日大に入学。

 ☆主な実績 16年の全日本ジュニア選手権を高1ながら初出場初優勝。19年に世界選手権代表に初選出され初優勝。同年11月のグランドスラム大阪大会を制し、東京五輪の男女全14階級最速で内定した。

 ☆サイズ 身長1メートル62は、女子78キロ超級では小柄な部類。体重は110キロ前後が最も動きやすいという。

 ☆得意技 大内刈り、体落とし。組手は左組み。

 ☆親友 同い年の阿部詩とは何でも話せる間柄。海外遠征ではサイズの違いから、隣同士の席になることが多かった。

 ☆音楽 ジェネレーションズの大ファンで、DVD観賞が何よりの息抜き。南筑高の松尾顧問いわく、「柔道は大人びているが、ジェネレーションズの時は乙女に変わる」。

 ☆虎の穴 自宅の部屋を改装したトレーニング室で、毎日トレーニング。柔道着に重りを付けて持ち上げる“素根家名物”のトレーニングでは30キロから始まり、最終的に100キロを上げた。

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