泳いだ距離を競う「グレートマーリンレース」 カジキに衛星タグ 次こそ太平洋横断

[ 2021年5月23日 07:12 ]

リリースしたカジキ
Photo By スポニチ

 【釣遊録】

 昨年、静岡県の牧之原市の相良港にクルーザーを所有している友人、松下正春さんのお誘いでお盆休みにカジキ釣りに行ってきました。衛星タグという標識を打つ調査です。これは「サテライトタグ」とか「ポップアップタグ」と言われる超進化版です。タグの中にコンピューターを仕込み、それは270日間(約9カ月)作動します。水中では電波が届きませんが、作動期間終了後カジキから自動的に切り離され水面に浮きます。浮いたら電波が衛星経由で受信できるのでその間のカジキの行動が分かるわけです。

 IGFA(国際ゲームフィッシュ協会)ではその年にこの衛星タグを打ったカジキがどれだけの距離を泳いだかを競う「グレートマーリンレース」を行っています。これは世界中どこの海で釣られたカジキでもOK。衛星タグを打ち、最長距離を泳いだカジキにタグを打ったチームが表彰されるのです。

 通常のカジキ釣り大会では、釣ったカジキの重さを測って使ったラインクラスで判定され、順位が決まりますが、カジキのサイズは問いません。しかし270日後にしか結果が出ません。その間ワクワクして希望が持続します。

 カジキといえば釣り上げたら港へ持ち帰りぶら下げて一緒に写真を撮る、というのが今まででしたが、タグ&リリースが推奨され、さらにこんな衛星タグを打つという余裕の考え方があるのです。松下さんもたくさんカジキを釣り「もうカジキは殺さない、ぶら下げない」というポリシーを持っています。

 昨年8月11日、長男・勇樹にヒットした約80キロのシロカジキ(ブラックマーリン)に衛星タグを打つことができました。私たちの期待は太平洋を横断し、長距離ランナーになって9カ月後に浮き上がることです。

 しかしその結末は意外なものでした。調査結果分析をお願いしている東京大学大気海洋研究所の佐藤克文教授から昨年12月、「高知県でタグが上がったらしい」と連絡がありました。

 追跡調査するとどうやら途中で捕獲されてしまったみたいです。定置網か、延縄(はえなわ)か不明ですが、高知県の椎名漁港で78キロのカジキが水揚げされたとのことで、そのカジキは私たちがリリースしたものでした。

 しかし水上に上がってから得た航跡のデータが変でした。港から山の中を行ったり来たりして、まるでタグが大型の鳥に食べられて山上の巣までを往復しているようにも見えました。タグはまだ電波発信中だったので、修士課程の学生、松田康佑さんが受信機を持って現地へ行き、まるで金属探知機を使った宝探しのように探索してくれました。間違いなくこの港のどこかにタグがあると探し続け、そしてゴミの山の中に捨てられていた発信器(タグ)を見つけることに成功しました。そして研究室に戻りデータ解析をしてくれました。通常はタグそのものを回収できないので、貴重なデータとなるのです。難しいデータは割愛させていただいて別掲の地図に記したルートが回遊経路です。御前崎沖からいったん駿河湾に入った後、南下し、黒潮に逆らうようにして高知沖へ移動しています。私たちはこれから黒潮に乗って北上し、三陸沖でUターンして戻りガツオを追うのかと思っていたのですが、そうではなかったですね。

 今年もまた8月にタグ調査をやる予定です。次回は太平洋を大きく回遊してくれるカジキにタグを打ちたいものです。(東京海洋大学客員教授)

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