十三代目団十郎襲名「歌舞伎のため歌舞伎のことに生きられる…」海老蔵改め 覚悟の決意表明

[ 2022年11月1日 04:40 ]

東京・歌舞伎座で襲名記念特別公演を行った市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿(中央)、堀越勸玄くん改め八代目市川新之助(左)、後見の松本白鸚
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 市川海老蔵改め十三代目市川團十郎白猿(44)の襲名記念特別公演が31日、東京・歌舞伎座で開幕した。記念の「顔寄せ手打式」では「歌舞伎のため、歌舞伎のことに生きられる團十郎になる覚悟です」と決意表明。新型コロナウイルスの感染拡大による2年5カ月の延期を乗り越え、9年ぶりに誕生した大名跡を満席の1760人の観客が祝福した。

 團十郎として初の演目が「勧進帳」。坂東玉三郎(72)、片岡仁左衛門(78)と2人の人間国宝との共演で、お家芸の荒事を披露した。最後の場面では、團十郎演じる武蔵坊弁慶が、舞台、客席の順に一礼。襲名興行ならではの演出。大拍手の中、六方を踏んで花道を駆け抜けた。1998年「勧進帳」に初めて挑んだ際にはプレッシャーに押しつぶされかけ、夜中に逃げ出したこともある。それから24年。大名跡を背負い、歌舞伎界のけん引を期待される存在となった。

 課題もある。複数の歌舞伎専門家は「せりふの言い方など、まだ改善すべき点は多い」と指摘。シングルファーザーとして、2人の子供を育て、歌舞伎のほか自主公演にも挑む。「十三代目を取り巻く環境は厳しいが、それを乗り越え芸を磨いていけば新しい團十郎像を生み出すことができる」(歌舞伎関係者)と期待の声もある。

 開演50分前の午後4時過ぎには長男の堀越勸玄くん改め八代目市川新之助(9)を抱きながら楽屋入り。待っていたファンに手を振り「ありがとうございます」と笑顔であいさつした。

 「王道でありながら異端であり続ける」。襲名興行には、令和を生きる團十郎としての美学が詰まっている。12月の興行で上演される長女・市川ぼたん(11)の舞踊演目もその一つ。女性役者が歌舞伎座の舞台に立つことは極めて異例。それを実現させたのは、團十郎たっての願い。かねて「娘やせがれの世代が輝ける公演を作る義務がある」と語っていた。

 歌舞伎座での11、12月の興行後、2024年12月の大阪松竹座まで2年間、襲名披露が続く。“令和の團十郎”の歴史が始まった。

 ≪「顔寄せ手打式」前例に倣い公開≫「顔寄せ手打式」は、公演に出演する俳優らによる顔合わせの儀式。本来は公開されないが、十二代目の襲名興行の前例に倣い、この日も舞台上で行われた。團十郎のあいさつに続き、新之助は「これからよろしくお願い申し上げます」と元気に宣言。後見として傍らに座った松本白鸚(80)も「この両名、ますます芸道に精進いたすことと存じます。末永きご後援のほど、お願い申し上げます」と呼びかけた。手打ちの音頭は尾上菊五郎(80)が取った。

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