藤井2冠、注目集める対局中の「高速扇子回し」…識者「脳をシフトチェンジさせる効果」

[ 2020年8月22日 06:30 ]

対局中の「高速扇子回し」が注目されている
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 史上最年少のWタイトルを獲得した藤井聡太2冠(18)の対局中の“しぐさ”にも注目が集まっている。手の中で扇子を回す「高速扇子回し」。この動きは、思考にどのような影響を及ぼすのか。脳科学の専門家に聞いた。

 対局の中盤から終盤、白熱した局面でしばしば見られる藤井の「高速扇子回し」。王位戦第3局2日目には、あまりの回転の速さに、ABEMA中継で解説していた行方尚史九段(46)も「高速ですね。脳の回転と比例してるのか」と語って注目を集めた。

 医師・医学博士で脳を研究する「脳の学校」代表の加藤俊徳氏は、脳を機能ごとに「思考系」「運動系」「感情系」「記憶系」など8つの系統に分類。このうち、扇子を回す時には、体を動かすことに関係する「運動系」が使われているという。クルクルと指先を動かすことで思考を回転させているような印象があるが、加藤氏は「藤井さんが扇子を回している時、脳は運動系が動いていて、考えたり発想したりするのに使う思考系は実は止まっている」と解説する。

 それでは、扇子回しは藤井の思考にどのような影響を与えているのか。加藤氏は「指先(体)を動かすことで、いったん今までの思考をストップし、違う角度から考えて新しい発想を得る。脳をシフトチェンジさせる効果がある」と分析した。

 藤井は、5連覇している詰将棋解答選手権でも消しゴムをクルクルと回している。加藤氏は「経験から、何かを回すと楽にひらめくということが分かっているのでは」と本人も意識してやっている可能性を指摘した。

 加藤氏がこれまで見てきたトップアスリートや棋士の脳は、一般的な人より運動系と思考系の連動速度が速く、ちょっとした体の動きで脳をシフトチェンジし新アイデアを生み出すことができるという。ただ、これは“天才”に限られた話。勉強中にペンをクルクル回す人がいるが、「むしろ注意力が散漫になっている場合がある。新しい発想を得たい時は、散歩をするとかラジオ体操をするとか、大きな声でお経を唱えるとか、もっと大きな動作で脳を切り替えた方が有効でしょう」とした。

 脳の使い方も扇子の回転の速さも“異次元”の藤井。対局で扇子が高速回転した時の次の一手に注目だ。

 《逆の手で練習して脳に刺激を》加藤氏によると、指先を動かすことは脳に刺激を与えるため活性化に効果的。「扇子回しであれば、利き手ではない手で練習してみるといい。普段使っていない場所の脳を使うことにつながり、認知症予防などに役立ちます」。他に、右手の「グー、チョキ、パー」を追いかけるように、一つずつずらして同時に左手で「グー、チョキ、パー」を出していく手の体操もおすすめ。「次はこう動こう、と考えながら動かす」ことで思考系と運動系が鍛えられる。

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