驚くような球がないのになぜ打てない?ライバル球団の選手から見た阪神・村上の真価とは 

[ 2023年5月9日 07:00 ]

無失点継続中の村上(撮影・大森 寛明)
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 阪神・村上頌樹投手(24)が当初予定していた6日から降雨中止による2度の登板変更を経て、9日のヤクルト戦で先発し、甲子園デビューを果たす。目下、開幕から25イニング連続無失点中。直球の平均球速は145キロで、変化球もツーシーム、カットボール、フォーク、カーブなど多彩とはいえ、驚く球はない。日本人選手最速165キロを投じるロッテ・佐々木朗のような圧倒的なボールを持たない右腕が、なぜ打たれないのか。対戦チームの主力打者からの証言を基に、「虎の村神様」の真価に迫った。

 阪神・村上の特長とは――。19、20年にリーグ最多安打など現役屈指の好打者、中日・大島(4打数無安打)は、直球と変化球を同じ腕の振りから投じられる点に着目した。

 【大島】 真っすぐと変化球が同じような腕の振りで、真っすぐも思ったより手元で伸びてくる。あとは、なかなか高めに浮いてこない。対戦した時は失投がほとんど、なかった。真っすぐと変化球が同じような感じでくるから、変化球を投げそうで真っすぐだったり、真っすぐを投げそうで変化球だったり…そんな(ピッチトンネルを通す)感じ。体感で速く感じるというよりは、腕の振りの割には、球が来るという感じです。

 大島の指摘で輪郭が浮かび上がった特性。続いて17年リーグ最多安打、14、15、18年には同最多四球を選んだ選球眼も持つ巨人・丸(3打数無安打)は、独特な軌道と、対になる球種を操る投球術について言及した。

 【丸】 真っすぐに関してはカット成分がある真っすぐ。いわゆる真っスラ系の球でプラス、ホップ成分がある独特な軌道。あとは、それと対になるシンカー(系)というか、落ち球が、ある程度、操れている。質の高い対の球を操れる分、打者はアジャストしづらい。それ(映像と打席で見るのは違う感じ)は当然あります。何かないと、あんなに抑えられない。

 丸が挙げた「シンカー」は、おそらくツーシームとみられる。見極めにくい腕の振り、独特な軌道の直球、対になる球種…さらに、正捕手としてリーグ優勝3度、日本一1度に貢献し、今春WBCでも侍ジャパンの正捕手を務めたヤクルト・中村(3打数無安打)は大島、丸と共通見解を示しつつ、制球力、球質にも目を見張った。

 【中村】 コントロールがいい。背は低いけど、けっこう真っすぐに差される。質がいい。もう(ボールが手元に)来ちゃっている…みたいな。変化球を低めに集めてくるから、そこを意識すると真っすぐがドンと来るし、真っすぐがドンと来ると思うと変化球を振らされる。ランナーがいないのに考えてクイックしたりもする。それでストライクが取れるから、器用。

 以上の証言から浮かび上がるのは、どれか一つ…ではなく複数の長所を併せ持つ総合力の高い投手だ。2度のシーズン200安打、日米通算2500安打以上の同・青木(3打数1安打)の言葉に、それは集約される。

 【青木】 すごくコントロールが、いい印象。どれもいいボール。だから、あれだけ勝てる。コントロールもいいし、切れもあるし、すべてがいいんじゃないですか。両方。何かひとつだけじゃなくて、コントロールも切れもある。

 <1>直球と変化球の腕の振りが同じ<2>独特な軌道の真っスラ<3>高いレベルで対の変化をする球種<4>抜群の制球力と手元で伸びる球質――4選手の証言を総合すると、村上には上記の特性があることが分かった。だから、抑えることができる。実際に打席に立った者にしか分からない「虎の村神様」の真価。その一端が垣間見えた。(選手名後のカッコ内は村上との対戦成績)

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