【内田雅也の追球】阪神・青柳の不調物語る数字 典型的な「ゴロ投手」が一変

[ 2023年4月22日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神1―4中日 ( 2023年4月21日    バンテリンD )

<中・神>3回、降板する阪神・青柳(右)(撮影・岸 良祐) 
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 阪神・青柳晃洋の不調を物語るのが内野ゴロの減少である。

 3回もたず7安打4失点降板となったこの夜は龍空投ゴロ(2回裏)の1個だけ。それもチェンジアップに泳いだボテボテで、本来のツーシームで詰まらせたゴロは皆無だった。5回途中5失点KOだった前回登板(14日・DeNA戦)もゴロアウトはわずか4個だった(バントは除く)。

 投手の特徴が現れる「GO/AO」(ゴロアウトをフライアウトで割った数値)をみると、昨季は1・68で典型的な「ゴロ投手」だった。何しろ2桁のゴロアウトを奪った試合が11度もあった。

 今季はこの夜でゴロアウトがフライアウトを下回った。数値は0・90となり本来の姿ではない「フライ投手」のようだ。

 なぜ、ゴロが転がらないのか――は難問である。ボールがバットの下っ面に当たったり、根元付近で詰まらせれば転がるが、それは投球とどう関係しているのか。

 「分かりませんが」と前置きして阪神投手コーチ時代の久保康生(現巨人投手コーチ)が「僕は入射角の問題だと思います」と話していたのを覚えている。投球がどのような角度でバットに当たるのか。打ち取れる角度をいかに出すのか。問題は解決していない。

 この夜の青柳は捕手の構えたミットとは反対に来る逆球など制球も乱れている。一方でスピードガンでは計れない球威もないように感じる。

 象徴的な例が相手投手の小笠原慎之介との対戦だった。2回裏1死の打席では直球もツーシームもことごとくファウルで粘られ、7球目でようやく二飛にとった。3回裏2死一、二塁で打席に迎えたときには、思わず記者席で「打たれる」と声に出た。初球、内角寄りのツーシームを見事に中前適時打され、4点目献上、降板となった。

 投手は心身ともに繊細である。何しろボールを離す位置は<1000分の1秒差で不正確>であり<考えれば考えるほど深みにはまる>と心理学者マイク・スタドラーが『一球の心理学』(ダイヤモンド社)に記している。<いちばん望ましいのは何千回も繰り返してきた投球フォームをいつも通り行うこと>と高度な再現性も求められる。

 エースの不調はこの夜の1敗以上に問題だ。原因が明確に分かれば対処の仕方もあろう。今は本来の姿を見失い、本人もチームも苦悩が深まっている。 =敬称略=(編集委員)

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2023年4月22日のニュース