侍・栗山監督、世界一奪回へ“勝つ!勝つ!克つ!”長嶋イズム継承で来年WBC全試合勝つ!

[ 2022年10月18日 05:10 ]

ポーズを決める侍ジャパンの栗山監督(撮影・会津 智海)
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 勝つ!勝つ!克(か)つ!侍ジャパン・栗山英樹監督(61)が、11月の強化試合「侍ジャパンシリーズ2022」を前に単独インタビューに応じ、自身の初陣となる同戦のテーマに「克(かつ)」を掲げた。アテネ五輪の日本代表監督だった長嶋茂雄氏(86=巨人終身名誉監督)から伝授された心得で、全試合に勝ちにいくことで世界一奪回の道が開けると強調。来年3月のWBCまで勝ちきる覚悟を語った。(聞き手・秋村 誠人、神田 佑)

 ――初陣となる強化試合4試合の意義は?
 「その瞬間、その瞬間にベストなメンバーでベストを尽くす。もちろん、確認したいことがあるかもしれないけど、今日一日を全力を尽くさなければ明日につながっていかないというのが自分の中である。野球の試合は基本的に全て勝ちにいかないと、何も生まれてこないと思っている」

 ――強化試合のテーマに「克」を掲げた。
 「自分に勝たなきゃいけないから。試合に勝つんだけど、自分にも勝ってほしい。勝つことを大前提にそれぞれに役割とか役目とか、試合に対してやらなきゃいけないことがある。監督、コーチ、スタッフもやらなければいけないことを(して)、自分に打ち勝っていかないといけない。それがこの11月だと思う。全員が自分に勝ってくれれば試合は勝手に勝つので。“克”はそういう意味」

 ――6月に長嶋さんと会談して“負けていい試合は一切ない”と言われた。
 「長嶋さんに言われたのは大会に臨むにあたって“負けてもいいや”という発想は、プロ野球のシーズンで50敗はできるという負け方とは違う。短期決戦において“一つ負けてもいい”という心のほつれ、どこかで自分が諦めてしまう気持ちが少しでも出ると、ずっと引っ張られる可能性があるよと。(03年の五輪アジア予選初戦で格下の)中国戦で(エースの)上原を突っ込んでいったのも、その試合から最後まで勝ちきる試合になっているという考え方。“どこかで負けてもいいや”みたいな発想は一切入れてはいけない、と」

 ――今回の強化試合から全て勝ちきる?
 「そう、全てがつながっていくので。最初から負けを想定していたらダメ。“勝つ、勝つ、勝つ”なので。WBCで勝ちきるためには、普段の生活から全て勝っていかないと勝ちきれないよということ。例えば、人に会って“おはようございます”とあいさつする時、寝不足で体調が悪い“おはようございます”は許されないよと。あいさつの仕方が負けている、人に嫌な思いをさせている。普段の生活から全てを勝ちきっていかないと、勝ちにつながらないと長嶋さんに教わった」

 ――村上はヤクルトでもチームリーダーで東京五輪も経験。プレー以外での期待は?
 「打てずに悔しい思いをして帰ってきてもベンチで一番先頭になって声を出す。そういう姿や思いが、彼を突き抜けるところに持っていかせている。チームリーダーに年齢は関係ない。できれば若い人たちが引っ張れるのが一番いい。そういう意味で彼にいろんなこと、物凄く大きな期待をしている」

 ――ロッテ・佐々木朗については?
 「来年3月に米国を倒すことを考えた時に、佐々木の、あの完全試合のような打者を全く寄せ付けない、圧倒してしまう投球が(倒す)イメージ。11月は体の状態を見ていくけど、3月にいい状態でいけるのなら物凄く期待は大きい。ダルビッシュや翔平(大谷)が来てくれて、由伸(山本)も含めて、先発として彼らと同じくらいの期待が持てるんじゃないかと思う」

 ――勝ちきるために投手では「第2先発」がポイントになる?
 「ダブル先発の形は当然、WBCは必要なので方向性だけは出していきたい。2番手でどんな感じに見えるのか、どういう感じの投球になるのか見ておかないといけない。球数(制限)があるということは2番目に投げる人たちの、状態とか結果が物凄く大きなものになる」

 ――初陣で気持ちの高ぶりは?
 「高ぶりより、とにかく今は自分のできる全ての準備をして3月に向かわなきゃいけない。その一つ一つをつぶしていく作業。その責任の方が重いかな。高ぶってきて“さあ行こう”というよりも、今は絶対にやり残さないようにしたい」

 ▽長嶋氏の「勝つ!勝つ!勝つ!」 巨人監督時代の94年10月8日、中日との最終戦(ナゴヤ)の同率首位決戦を前に「勝つ!」を3度絶叫。自身が「国民的行事」と表現し、勝った方が優勝となる「10・8決戦」でナインを奮い立たせ、第2次政権初の優勝を勝ち取った。脳梗塞の療養後初めて巨人の宮崎キャンプを視察した07年にも連呼し、その後の視察でも同様に選手を鼓舞した。

 ≪救援・ダルや抑え・由伸も「ある」≫栗山監督はWBC本番を見据えた投手起用のバリエーションにも言及した。強化試合のメンバーから外れているオリックス・山本、パドレス・ダルビッシュについて「例えば(3月に)ダルビッシュが来てくれて、彼が2イニングずつ毎試合投げてくれた方が勝ちやすいのなら、それもある。抑えも計算できてないというところで(山本)由伸の抑えもありだろうし。(投手起用は)それくらい幅がある」と強調。エンゼルス・大谷の二刀流起用も含め、本番での采配が注目される。

 ≪世界一へ欠かせないONの存在≫【取材後記】栗山監督は昨年12月の就任時から「長嶋さんと王さんにどうしても話を聞きたい」と強く願っていた。「自分にとって、野球イコール長嶋さん、王さんなので」。子供の頃から憧れてきた偉大な野球人と同じく、監督として世界の舞台に挑む今、ONの話は絶対に欠かせない“準備”なのだろうと感じた。

 日本ハムの監督に就任した12年のこと。シーズン前に都内の自宅に長嶋氏を訪ね、監督の心構えなどを教えられた。公式戦用の帽子のつばの裏に「3」と書いてもらい「シーズン中はいろんな場面で何度も背中を押してもらった」という。あれから10年。再び長嶋氏から教えを受け「王さんにも大会前にぜひ聞きたいと思っている」と話した。栗山監督の背番号89は、06年の第1回WBCで世界一に導いた王監督の背番号にあやかっている。(秋村 誠人)

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