元ヤクルト・近藤一樹が見た村上宗隆の1打席にかける思い「あしたのジョーみたいになっていて」

[ 2022年10月18日 12:06 ]

<NPBアワーズ2019>球団6年ぶり11人目となるセ・リーグ最優秀新人賞(新人賞)に選ばれ記念の額を手にガッツポーズするヤクルト・村上宗隆内野手
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 「最後の近鉄戦士」と呼ばれたヤクルト・坂口智隆外野手(38)が、今季限りで現役を引退し、ついに近鉄戦士がNPBプレーヤーから姿を消した。時代の流れを悲しむファンも多いが、まだ投手として投げている近鉄戦士がいる。四国アイランドリーグplus・香川で兼任コーチとして活躍する近藤一樹投手(39)だ。今季は13試合に登板し、なんと無失点の防御率「0・00」。来季も現役投手として投げるのか。注目の来季去就についてインタビューしつつ、接点のあるヤクルト・村上宗隆内野手(22)についても語ってもらった。

 古巣のヤクルトが、今年も日本シリーズに進出した。日本一連覇の掛かるチームで、今や欠かせない中心選手となったのが村上だ。近藤とはポジションも年齢も共通点は少ないが、実は“一番”知っている選手かもしれない。「神宮のロッカーが隣だったんです。僕がグローブの型をつけたり、歳も離れているけど、普通に話をしましたね。上がってから、ずっと一緒ですし」

 2019年のシーズン開幕前に、神宮のクラブハウスが改装された。その際、選手が好きな場所からロッカーを選択していき、気がつけば、近藤の隣が村上だった。入団2年目。ちょうど1軍に定着する初めての年のシーズン前だ。素晴らしい潜在能力が眠っていることはもちろん皆知っていたが、今のような「球界の中心」にいたわけではない。19歳には、まだ子どもっぽいところもあった反面、近藤はある「違和感」を常に感じていた。

 「1打席、1打席に対しての悔しがり方が、すごい強かったんですよ」

 ロッカーに戻ると、いつも打ちひしがれたような村上が座っている。隣の近藤が気安く声を掛けるのも、はばかられたほどだった。「例えば、抑えがサヨナラ負けしたぐらいのレベルで落ち込むんです。ロッカーで、その1打席凡退しただけで“あしたのジョー”みたいになっているんです」と振り返った。

 シーズンは長丁場。打てない日もあるのが普通だ。ましてや、プロ2年目の若手が打てなくても、そこまで背負う必要はないだろう。19年、村上は36本塁打、96打点。素晴らしい数字を残し、新人王にも輝いている。打率・231、184三振の数字が落ち込む要素だったとしても、やはり異質ではないだろうか。

 「そんなに悔しがる展開でもないのに、というところで悔しがるので、本人があの1打席の中でも、どれぐらいのプレッシャーを背負っていたのか、と。この子は1打席に対して、すごい重みを持たせているんだな、という印象でした。クローザーの1球というか、すごい重い失敗みたいな感じだった」

 今となっては、その「違和感」の理由が分かる。「1打席にかけている気持ちが表に出ていた」。その強烈なまでの思いの積み重ねが、令和初の3冠王に導き、歴史的な56本塁打の快挙へとつながったわけだ。近藤が感じた「違和感」は、歴史の第一歩だったのかもしれない。

 ◆近藤 一樹(こんどう・かずき)1983年(昭58)7月8日、神奈川県出身の39歳。日大三から01年ドラフト7巡目で近鉄入り。04年オフの分配ドラフトでオリックスに移籍し、08年自己最多の10勝。11年以降は右肘故障に苦しみ、14年オフの育成選手を経て、翌年4年ぶりの復活勝利。16年途中にヤクルトに移籍し、18年には球団タイ記録となる74試合に登板、最優秀中継ぎ投手賞のタイトルを獲得した。NPB通算347試合、43勝57敗、4セーブ、71ホールド。右投げ右打ち。

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