横浜大洋ホエールズを覚えていますか?

[ 2022年3月28日 08:00 ]

関内にBaseball Hub「まるは」をオープンした鈴木さん
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 【君島圭介のスポーツと人間】店の代表取締役である鈴木則行さんは「たまに勝つから胸が躍るんですよ」と笑った。3月26日の2戦目、DeNAは広島に大敗を喫した。開幕から連敗スタートとなったが、店内は明るい。DeNAのユニホームを着た客は「2、3試合負けたくらいで横浜のファンは落ち込まないよ」とビールジョッキを豪快にあおった。

 横浜スタジアムやJR関内駅にほど近い、通称ベイスターズ通りを歩いていると「は」の字を○で囲った風変わりな懐かしい看板が目に飛び込んでくる。ここがBaseball Hub「まるは」だ。

 かつて横浜の街は「まるは」の社章で親しまれた大洋漁業(現マルハニチロ)をオーナー会社とする球団、大洋ホエールズの本拠地だった。鈴木さんは「30年前は横浜大洋銀行なんてバカにされてね。弱かったから」と微笑んだ。その間も客の注目は途切れない。店内は大洋ホエールズがコンセプトのデザインで統一されている。飲み物も食べ物もカウンターで注文する、欧州のパブと同じキャッシュオンスタイル。工夫をこらしたおつまみはオール500円。注文を受ける度、鈴木さんはてきぱきと動いた。

 川崎から移転して誕生した横浜大洋ホエールズは15シーズンでBクラス12度(最下位3度)と強くはなかった。10点取っても11点取られるようなチーム。それでも平松政次、遠藤一彦、田代富雄(現DeNA巡回打撃コーチ)ら名選手を輩出した。「もう駄目かという場面で平松さんがカミソリシュートでライバルを三振に取る。弱きを助け、強きをくじく。そういうヒーロー的な魅力がありましたね」。鈴木さんはそう懐かしむ。

 店は昨年8月にオープンのはずだったが、長引くコロナ禍でとん挫した。だが、鈴木さんはあきらめなかった。「どんな困難にも負けない。それは“まるは”の時代から一緒ですよ」。チームが何度も直面した危機を乗り越えてきたようにプロ野球の開幕日、3月25日に店もオープンした。

 今のDeNAベイスターズは鈴木さんの目にどう映っているのだろう。「若者、とくに女性を多く取り込み、球場パフォーマンスも盛り上げ方もうまいですよね」。スタジアム同様に店内も若い女性客が目立った。鈴木さんは「ホエールズを懐かしむファン、新しいベイスターズのファン両方に楽しんで欲しい」と話した。

 野球場をイメージした店のフロアは川崎が本拠地だった時代のチームカラー、オレンジと緑を基調としている。過去と現在を「横浜大洋ホエールズ」がつないでいる。そのHub(=拠点)として、野球を、横浜を愛する鈴木さんが開いた店は、居心地がよかった。(専門委員)

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2022年3月28日のニュース