市和歌山・米田天翼 魂の141球完投!サヨナラ打! 「おまえが決めろ」半田監督の言葉に応えた

[ 2022年3月28日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会   市和歌山2ー1明秀学園日立 ( 2022年3月27日    甲子園 )

<市和歌山・明秀日立>9回2死一、二塁、市和歌山・米田(1番)はサヨナラ打を放ち、ガッツポーズ(撮影・坂田 高浩)
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 市和歌山はエース右腕・米田天翼(つばさ)が141球を投じて9回を1失点に抑え、最後はサヨナラ打も放って昨秋関東大会覇者の明秀学園日立(茨城)を2―1で撃破した。

 球種は覚えていない。夢中だった。1―1で迎えた9回1死一、二塁。米田がフォークを芯で捉えた。打球は右中間を転々。半田真一監督から伝令を通じて届いていた「おまえが決めろ」の言葉に応え、ガッツポーズを繰り返して喜びを表した。

 「一番に、うれしいというのが正直な気持ち。先輩方へ“やったよ”と言いたいです」

 サヨナラでの8強進出。殊勲打を呼んだのは自身の141球の快投だった。最速149キロ右腕が「本調子ではなかった」と話すように、初回に計測した143キロが最速。本来の直球は影を潜めたが、打者の手元で動く球を有効に活用した。

 9回1死一、二塁ではマウンドに来た主将で捕手の松村祥吾から「エースの意地を見せてくれ」とハッパを掛けられて発奮。2死二、三塁とされたが、1回戦で花巻東・佐々木麟太郎に完勝したこん身の直球で最後は二ゴロで仕留めた。9回9安打1失点。選抜では16年決勝の智弁学園・村上頌樹(現阪神)以来となる完投&サヨナラ打を決めた。

 昨春の2回戦・明豊(大分)戦で先発して4回1失点と好投も、チームは1―2で敗戦。その悔しさを晴らす劇的勝利。小園健太(現DeNA)、松川虎生(現ロッテ)らを擁しても越えられなかった8強への壁を越え、兄・航輝(龍谷大)のいた19年と肩を並べた。

 28日の準々決勝の相手は同じ近畿の大阪桐蔭。昨秋神宮大会覇者だが、ひるむことはない。「エースとしては全イニング無失点が目標。チーム一丸となって束になって戦いたい」と米田。65年以来57年ぶりの4強をかけて強敵に立ち向かう。(北野 将市)

《幼少期から大きな苦難乗り越えてきた“タフネス”》

 【記者フリートーク】実は、米田は過去に何度も大きな苦難を乗り越えてきていた。小学3年時のソフトボールのクラブ活動で、他生徒のすっぽ抜けたバットが顔面を直撃。緊急搬送され手術を受けた。現在のプレーに支障はないが、中学での試合前には、急に前歯が抜けてしまったこともある。2歳になる直前には、巨人のドラフト1位右腕・大勢(関西国際大)と同じ川崎病を発症。2週間弱で退院はできたが、心臓に後遺症が残る可能性もあった。

 また、乳幼児期から3歳上の兄・航輝さん、2歳上の姉・和楓(のどか)さんと同じ料理を手づかみで豪快に頬張っていた。野球を始めた当初はアスファルトの上でスライディングしてもへっちゃら。投球同様、生まれながらのタフネスぶりが、ケガや病気を乗り越えられた理由なのかもしれない。(アマ野球担当・北野 将市)

 ◇米田 天翼(よねだ・つばさ)2005年(平17)2月13日生まれ、大阪府岸和田市出身の17歳。城東小1年から岸和田サウスジュニアーズで野球を始め、2年から岸和田ストロングスへ。山直中では貝塚シニアに所属。市和歌山では1年秋からベンチ入りし2年秋からエース。1メートル75、81キロ。右投げ右打ち。

 ○…市和歌山の米田がサヨナラ打を放ち完投勝利。選抜の完投勝利&サヨナラ打は16年決勝の村上(智弁学園=現阪神)以来だ。また、市和歌山は選抜で、19年1回戦の呉戦、昨年1回戦の県岐阜商戦に次ぎ出場3大会連続3度目のサヨナラ勝ち。和歌山県勢では箕島に並ぶ最多回数で、県勢にとっては選抜10度目のサヨナラ勝ちになった。

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