星稜・マーガードの「覚悟」に王貞治を見た 57年「血染めの投球」

[ 2022年3月28日 05:30 ]

第94回選抜高校野球大会第8日第1試合・2回戦   星稜6―2大垣日大 ( 2022年3月27日    甲子園 )

<星稜・大垣日大>星稜先発・マーガードのピッチング(撮影・成瀬 徹)
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 【秋村誠人の聖地誠論】エースには必要な要素がいくつかある。責任感、安定感、気持ちの強さ…。その中の一つに「チームに尽くす覚悟」もあると思っている。星稜(石川)の背番号1、マーガード真偉輝キアン(3年)にその覚悟を感じた。

 22日の1回戦(対天理)で右手中指の爪を割って8回途中降板。そこから中4日で2回戦のマウンドに上がった。注目したのは投球内容よりも、どんな振る舞いを見せるか。マーガードはひたすら淡々と、全力で腕を振っていた。指を気にするそぶりはほとんど見せない。気にならないはずはないが、エースが不安そうにすればチームの士気に関わる。仲間のため、今できることをやり切ろうとする覚悟が見て取れた。

 57年のセンバツ。早実(東京)の2年生エース・王貞治(現ソフトバンク球団会長兼特別チームアドバイザー)が、左手の人さし指と中指のマメをつぶしながら血染めのボールを投げ続けたのは有名な話だ。高知商との決勝も完投し、初めて紫紺の大旗が箱根の山を越えた。このとき、バッテリーを組んだ田村利宏には「誰にも言うな」と話していたという。チームを不安にさせないために、何があっても投げ抜く覚悟だったのではないか。

 マーガードは5回に先頭打者へ四球を与えた後、チラッと指先を見た。でも、マウンドで気にするそぶりはそれぐらいだ。ひたむきに投げ続けるエースに応え、打線は3、4回に2点ずつ加点。3回は1番・永井士航(3年)の平凡な二ゴロが失策を誘い、4回にも永井の三塁前への高いバウンドのゴロが内野安打に。前日の雨で水分を含んだグラウンドでバウンドが変わったようで、いずれも得点につながっている。

 2つの打球は勝負のあやだろう。ただ、マーガードの覚悟には、甲子園の女神がほほ笑んでくれたのではないか。そんなふうに感じた。(専門委員)

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2022年3月28日のニュース