【内田雅也の追球】守備のミスを取り返したサンタナの四球 大舞台で必要な「欲」を制御する姿勢

[ 2021年11月25日 08:00 ]

SMBC日本シリーズ2021第4戦   ヤクルト2―1オリックス ( 2021年11月24日    東京D )

<日本S ヤ・オ(4)>6回2死一、二塁、オスナの適時打で生還した二走・サンタナはナインの出迎えを受ける(撮影・岡田 丈靖)
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 日本シリーズで一塁から単打で長駆(ちょうく)本塁へ生還する。多くのファンが思い起こすのは西武・辻発彦(現西武監督)の走塁である。

 巨人と戦った1987(昭和62)年の第6戦(西武球場=現メットライフドーム)の8回裏、2死一塁。秋山幸二の中前打で辻は一気に本塁へ還った。中堅手ウォーレン・クロマティの緩慢な打球処理、山なり返球と守備のすきを突いた。

 この夜、オリックスの同点生還も6回表、同じ2死一塁。宗佑磨の右前打で福田周平が還った。

 ヤクルト右翼手ドミンゴ・サンタナは打球をはじき、失策がついた。返球も二塁カバーの遊撃手に行った。走者が本塁を突くとは思っていなかったのだろう。油断があったのは間違いない。

 古い映像を確認し、ストップウオッチで計ると打者インパクトの瞬間から辻の生還は10秒36。この夜の福田は走者スタートのフルカウントだったこともあり、9秒67と速い。俊足も効いていた。

 三塁ベースコーチが早計に判断せず、三塁を回った直後まで本塁突入をうかがう姿勢は共通していた。当時の伊原春樹を今の風岡尚幸に見る。

 ミスしたサンタナだが今シリーズで幸運を呼ぶ男だ。前夜決勝弾、この夜先制弾。同点とされた直後の6回裏も併殺で2死無走者の後、低めフォークを見極め四球を選んだ。中村悠平、ホセ・オスナの連打で勝ち越し決勝の本塁に還った。

 以前も書いたが、中米選手の間には「歩いては海を渡れない」という格言がある。大リーグのスカウトにアピールするには四球を選んで歩いていては、カリブ海を渡って米国本土には行けない。

 ドミニカ共和国で生まれ、16歳でフィリーズとマイナー契約したサンタナも自分が目立ちたい。ところが来日してヤクルトの「全員野球」になじむうちに変わってきた。

 四球数を三振数で割った「BB/K」は選球眼や打席自制心の指標だ。サンタナはシーズン中、四球42個と少なく三振103個で0・41と悪い。ところがシリーズでは4試合連続の四球4個で三振はわずか1個だ。知らぬ間につなぐ姿勢が身についているようだ。

 野村克也は<大事な試合、大事な場面であるほど欲をコントロールしなければならない>と『短期決戦の勝ち方』(祥伝社新書)に書いた。禅問答のような<欲から入って、欲から離れる>姿勢が見えた。 =敬称略= (編集委員)

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