明徳義塾・馬淵監督 名将対決制し春夏通算52勝目 ささやき、継投、ずばり的中も「僕は迷う方」

[ 2021年8月16日 05:30 ]

第103回全国高校野球選手権 1回戦   明徳義塾3-2県岐阜商 ( 2021年8月15日    甲子園 )

(明徳義塾・県立岐阜商)円陣で(左から)加藤、代木のバッテリーに指示を出す明徳義塾・馬淵監督(撮影・後藤 正志)
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 9回2死二塁。指揮官の言葉を胸に、明徳義塾の森松幸亮は打席へ向かった。5球目、真ん中低めのスライダーをはじき返すと、打球は前進守備の中堅手の頭上へ。馬淵史郎監督に歴代単独4位となる甲子園通算52勝目をプレゼントする殊勲のサヨナラ打となった。

 「チームみんなのために、つなげる意識で出た1本です」

 伏線があった。前打者が犠打を決める前、監督に呼び止められていた。それまで4打数1安打2三振。「ここに何しに来たんや。お前は考えて打つタイプじゃない。打てると思ったら振って行け」。土壇場のささやきが、劇的な一打を生んだ。

 特別な夏の初戦で、知将は手腕を存分に発揮した。6回、エース左腕の代木大和が先頭への死球と三塁打で先制点を献上。なお無死三塁の場面で吉村優聖歩にスパッと代えた。変則左腕は2者連続の遊ゴロと三振でピンチを脱出。「外野フライを打たれると嫌なところ。吉村はボールが低いからゴロになりやすいと思って代えた」と意図を説明し、「あちらは名将でも、僕は名将じゃない。あえて言うなら迷う方」と冗談を飛ばした。迷いなき決断が試合の流れを引き寄せ、県岐阜商・鍛治舎巧監督との“名将対決”を制した。

 学校にとって節目の春夏通算60勝目ともなった1勝。「選手たちが積み上げたものが、僕の勝ち星になっただけ。卒業生もテレビの前で歌っていたんじゃないかと…」と、昨年の3年生を思い言葉を詰まらせる場面もあった。2年ぶりの夏。名物監督も彼らの思いを背負いながら、次の1勝を重ねていく。 (北野 将市)

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2021年8月16日のニュース