帯広農、聖地初勝利逃すも「楽しかった」4日がかりの初戦、逆転負けも風間から意地の7安打2得点

[ 2021年8月16日 05:30 ]

第103回全国高校野球選手権 1回戦   帯広農2ー4ノースアジア大明桜 ( 2021年8月15日    甲子園 )

<ノースアジア大明桜・帯広農>試合に敗れ、ベンチ前でノースアジア大明桜の校歌を聞く帯広農ナイン(撮影・成瀬 徹)
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 39年ぶり2度目出場の帯広農(北北海道)はノースアジア大明桜(秋田)に2―4と逆転負けし、甲子園初勝利を逃した。4回終了後降雨ノーゲームとなった12日の試合で無安打だった打線は、プロ注目の最速157キロ右腕・風間球打(3年)から7安打を放って意地を見せた。降雨ノーゲームに2日連続順延、さらにこの日も約3時間遅れで試合開始となった中、1時間53分の試合を全員で戦い抜いた。

 校歌は歌えなかった。だが、涙はなかった。帯広農ナインの姿はすがすがしくさえあった。日程が大きくずれ込んだ中、この日も開始予定から約3時間遅れ。心の底から待ち望んだ試合だった。逆転負けしたが、1番打者の西川健生(3年)は「凄く楽しかった。その一言に尽きる。最初から最後まで笑顔で野球ができた。今までで一番最高の試合」。その言葉にうそはなかった。

 12日の試合は風間の前に無安打、0―5の劣勢で4回終了後に降雨ノーゲームになった。苦しい状況がリセットされたこと、何より風間と対戦した55球を無駄にしなかった。この2日間は、それまで1メートル前に出していた球速130キロほどのマシンを、さらに1メートル前に出して打ち込んだ。午前8時の開始に備えた連日の早朝3時30分起床も、室内練習場での練習のための“甲子園通い”を楽しんだ。

 「笑顔で、強いものに対して束になってかかっていく、公立校の意地は見せられたと思う」

 前田康晴監督(45)はそう話した。前日14日の練習後、佐伯柊主将(3年)と話した上で“初戦”から半数の打順を入れ替えた。徹底したのは、「ベルトより高めの球を打つ」の一点だ。「多く打たせたい」と4番から3番に上げた佐伯主将が初回に「自分が流れをつくりたかった」と風間の148キロ直球を中越え二塁打したのを皮切りに、打線は長打3本を含む7安打。4回に一時勝ち越しとなる右越え適時二塁打を放った佐藤敦基(3年)は「好投手なので、ただ同じことをしていても仕方ない。打席の前に立ってみたり詰めてみたり、少しでも投げづらくするように意識した」。ベース寄りに立ち、148キロの外角直球に食らいついた。

 明暗は分かれたが、試合終了のあいさつ後、試合を待ちわびてきた両校ナインは握手を交わした。昨夏の甲子園交流試合(対高崎健康福祉大高崎)で「記憶」に残る1勝を挙げた帯広農の「記録」に残る初勝利は、次代が引き継ぐ。「(昨秋)新チームになった時は(周りよりも)スタートは遅れた。でも日ごろやることを徹底すればここまで来られる」と佐伯主将。“三度目の正直”へ、また挑戦が始まる。(竹内 敦子)

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