寂しい野球の五輪種目落選 東京でその熱気を世界発信、継続的な普及活動を

[ 2019年2月23日 11:00 ]

<侍ジャパン・MLB選抜1>9回2死一塁、柳田が中越えにサヨナラ2ランを放つ(撮影・篠原岳夫)
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 どれだけ普及活動に努めようとも、開催国で人気のない競技に何十億、何百億円もかかる球場建設など考えられない。予想はしていたが、2024年のパリ五輪の追加種目から、野球・ソフトボールは落選した。

 2004年のアテネ五輪で野球日本代表を取材した時、欧州の男性が「野球場はメーンスタジアムから遠すぎるよ」と不平を漏らしていた。確かに車で30分弱はかかっただろうか。タクシーに乗って「野球場」を伝えても、場所が分からない運転手もいて困った。報道陣は、日本と韓国のメディアが大方を占めた。

 世界野球ソフトボール連盟(WBSC)は1月、日本、米国、フランスの国内競技団体が覚書を交わした。パリ五輪での継続実施を主目的に、日米がフランスの野球の育成、競技発展を支援することとしたものだが、除外されてトーンダウンしては、意味がない。五輪にほとんど無関心といっていい大リーグも、6月29、30日(日本時間30日、7月1日)に史上初の欧州開催となるロンドンでのヤンキース―レッドソックス戦が行われる。28年のロサンゼルス五輪以降、継続的に野球競技復活を果たすには、地道な普及活動は不可欠だ。

 アテネ五輪の時に記者が寝泊まりしていたのは、メーンスタジアムから2キロほどにあったマンションだった。歓声は競技終了の午後10時近くまで聞こえていた。うらやましかった。

 「世界のスポーツの祭典に野球が入っていないのは寂しいし、悔しい」と話したのは04年アテネ五輪、08年北京五輪で主将を務めたヤクルトの宮本慎也ヘッドコーチだ。宮本主将がアテネでの午前開始の試合で7時30分に宿舎を出発する際、ある選手があくびをしていたことを厳しい顔で注意した。隙を見せずに日の丸を背負う重圧と戦う姿に心を打たれたが、比較的静かなスタンドに違和感は残った。

 東京五輪では、選手の必死な姿勢だけではない。ファンの熱い声援がついてくる。その熱気が少しでも世界の人に伝わることを願う。(記者コラム・倉橋 憲史)

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