甲子園の土が変わる!メジャー仕様の「硬さ」と伝統の「黒さ」ブレンド

[ 2019年2月23日 06:10 ]

宜野座村野球場の倉庫に置かれた大リーグの黒土「ブラックスティック」(左)と島根の粒土「ヒートサンド」
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 【内田雅也の追球】今年から大リーグ仕様の硬い土を入れる甲子園球場のマウンド表面に新たに粒状の土をまくことになった。グラウンドを管理する阪神園芸が新しい「硬さ」に加え、伝統的な「黒さ」にも配慮して、配合を考案した。

 硬い土は米国産輸入品の「ブラックスティック」で、大リーグ本拠地球場の8割で使われているという。粘土質で硬く、投手が軸足で蹴る部分、踏み出した足が着く部分もほとんど削られない。

 近年、投手の間で大リーグのように硬いマウンドへの要望が高まり、導入を決めた。土が掘れないため、力が伝わりやすいなどの利点がある。

 今回、阪神キャンプ地の沖縄・宜野座村野球場(かりゆしホテルズボールパーク宜野座)のマウンドやブルペンでも入れられており、阪神投手陣からはおおむね好評だ。

 ただ、問題は「ブラックスティック」の色は黒土とはいえグレー系で、また粘土質のため水をまくとべとつく。

 甲子園球場グラウンドキーパーのリーダー、阪神園芸の金沢健児甲子園施設部長(51)は「散水すると、べちゃべちゃになる。保湿性のある土を上にまく必要がある。しかも甲子園球場のイメージを損なわない黒さがほしい」とみていた。

 大リーグでも表面に「コンディショナー」と呼ぶ粒状の赤土をかぶせる。2014年11月11日、甲子園球場で日米野球、MLBオールスターVS阪神・巨人連合が行われた際、同行していた大リーグのグラウンドキーパーが「ブラックスティック」の上にまいていた。商品の使用書にも粒状土の必要性が書かれている。

 黒い粒状の土を探したところ、5年前に鳴尾浜球場で試験導入していた島根産業の「ヒートサンド」が思い当たった。宜野座ブルペンで試してみると「色、排水性、保湿性とも良かった」(金沢部長)と甲子園での使用を決めた。すでに甲子園球場の整備も終えた。

 島根産業は島根県飯南町の山あいにある。1984年創業当時から育苗培土、つまり米の苗床の土を販売していた。2012年から野球用の土を製造、中国地区の野球場や高校のグラウンドを中心に実績がある。

 中国山地で採れる自然の黒土を回転式の釜に入れ、800度で熱し、雑菌や異物を取り除く。回転するうちに土は固まり、直径4ミリ以下の粒状になる。この黒土に山砂、浜砂を混ぜる。配合比率は黒土7対砂3など状況に応じて変える。

 商品の名付け親でもある澤田正道営業部課長(41)は「厳選した黒土を使い、金沢部長の助言に沿って配合した。土と砂の比率は甲子園独自の“金沢ブレンド”と言えます」と話した。伝統の黒さも得て、甲子園のマウンドは硬く、新しくなる。

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