【西兵庫】明石商 土壇場で「切り札」代打が同点三塁打 延長10回サヨナラで4年連続決勝

[ 2018年7月25日 14:54 ]

第100回全国高校野球選手権記念西兵庫大会準決勝   明石商4―3小野 ( 2018年7月24日    ほっともっとフィールド神戸 )

<明石商・小野>9回1死二、三塁、代打で同点三塁打を放ち、三塁上でこぶしを握る明石商・安藤
Photo By スポニチ

 0―3と追い詰められた9回裏の攻撃前円陣で明石商・狭間善徳監督(54)は「開き直ろう」と言った。

 8回まで小野の右腕・正中(しょうなか)敦士(3年)に散発5安打、無得点に抑えられていた。「いい投手だった。兵庫県ナンバーワンだろう。腕のしなり、球持ちの良さ……。素晴らしい投球だった」。4個の犠打で走者を得点圏に送るのだが、あと1本が出なかった。

 狭間監督の「開き直って、タイミングを計って打っていこう」という言葉に、選手たちが応えた。

 安打、四球に暴投がからんだ1死一、三塁から山本健太朗(2年)が右前適時打して1点を返した。この好機に代打・安藤碧(2年)を起用した。監督は「8回に3点目を取られた時に“必ず出番があるぞ。ベンチ裏でバットを振っておけ”と言っておいた」と準備を命じていた。

 「もともとバッティングはいい。このところずっと調子が良かったんだ。(試合に)出したい、出したいと思っていた」。昨秋や今春は先発でも出場していた、とっておきの切り札だった。

 打席に入った安藤は「特に緊張もしないし、自分でも落ち着いているなと思っていた」と話す。

 1ボール―1ストライクから二盗が入り1死二、三塁。この時時、ベンチからタイムがかかり、先輩の植本亮太(3年)が伝令で監督の言葉を伝えにきた。「まっすぐだけ狙って、思い切って振れ」

 うなずいた安藤は続く2―1からの高め速球を振り抜いた。左打席から放たれた大飛球は相手中堅手の頭上を越えた。2人の走者が相次いで本塁に駆け込んだ。同点の三塁打に三塁上、左こぶしを握りしめた。

 「うれしかったし、びっくりした」とあっという間の同点に自分でも驚いていた。

 この一打で息を吹き返した明石商は延長10回裏、先頭・田渕翔(3年)の右前打と、この日5個目の犠打、さらに暴投で1死三塁。相手は半ば敬遠気味で連続四球の満塁策をとり、1死満塁。最後は植田貴沙羅(3年)がライナーで中越え打を放ち、サヨナラで決着をつけた。

 これで明石商は4年連続の決勝進出だ。その決勝では過去3年続けて敗れており、「今年こそ」の思いは強い。

 「また、その話……」と狭間監督は苦笑いした後、「この激戦区兵庫で4年も続けて決勝戦を戦えるなんて幸せです」と語った。

 日本シリーズ出場8度ですべて敗れた元大毎、阪急、近鉄監督の西本幸雄氏は「悲運の闘将」と呼ばれた。だが西本氏は「8度も選手権(日本シリーズ)に出たんだ。わしはちっとも悲運などとは思っていない。幸せ者じゃよ」と語っていたのを思い出す。

 狭間監督は「今年の子らは毎日毎日、コツコツと努力してやってきた。全部員129人のうちの20人だ。そんな思いもくんで懸命にやってくれている」と、選手たちをたたえる。過去3年の思いもこめ、27日の決勝に挑む。(内田 雅也)

続きを表示

この記事のフォト

2018年7月25日のニュース