【野球のツボ】センスは小笠原クラス!目を引く阪神・今成の打撃

[ 2013年7月18日 18:25 ]

非凡な打撃センスが光る阪神・今成

 大谷(日本ハム)、藤浪(阪神)などルーキーが台頭し、若返りが進んだ前半戦のプロ野球。各球団の売り出し中の選手を見る楽しみが増えたが、バッティングで目を引いた選手がいる。それが阪神の今成亮太選手だ。

 どこが目を引くかと言えば、第一に構え方だ。投球に対して、バットが常に出せる構えをしている。早く準備が出来ているから、対応も的確だ。第二には、そこからのバットコントロールに非凡なものを感じる。バットの使い方のうまさという点で、イメージするのは中日や阪神でプレーした田尾安志。最近の選手で言えば、日本ハムから現在は巨人でプレーする小笠原道大とも共通したセンスを感じた。

 読者の方は驚かれるかもしれないが、そのクラスのバッティングセンスを持った選手だと思う。ずっと使い続ければ、打率を含めて、数字を残せる力はあると思う。

 昨年までは、ほとんど印象に残る選手ではなかった。日本ハム時代は鶴岡、大野に次ぐ3番手のキャッチャーで、出番は限られていた。捕手が手薄ということで阪神に移籍したが、福留の故障で外野が手薄になった今季、初めてその打撃をアピールするチャンスに恵まれた格好だ。

 急造外野手ということで、課題は守備。16日の巨人戦でも7回に手痛いエラーを犯し、相手を勢いづかせたが、あの場面は強肩をアピールしようと、前に突っ込みすぎたという感じがした。無難に処理しようと思えば、出来たはず。そのへんは場数を踏めば、慣れてくるし、守りのリスクを上回るだけのバッティングが、今成の武器だ。阪神の後半戦の浮沈のカギを、今成が握っているような気がしてならない。

 本職はキャッチャーながら、打撃を生かして成功した例で思い出すのは亡くなった木村拓也選手だ。日本ハムに捕手として入団、外野の守備固め要員だったキムタクが、広島に移籍したときの担当コーチが私だった。彼の打撃と肩を生かすために、「内野をやらせたい」と監督に提案。ノックで鍛えたことが、その後のキムタクにつながった。

 阪神首脳陣が、今成のこれからの起用をどう考えるか。もう一度、捕手でという選択肢もあるのだが、打撃を生かす方向で行くならば、オフに三塁コンバートをするのも、面白いと見ている。今成サードでバットと肩で勝負させれば、ポジションは固定できるという予感がしている。(前WBC日本代表コーチ)

 ◆高代 延博(たかしろ・のぶひろ)1954年5月27日生まれ、58歳。奈良県出身。智弁学園-法大-東芝-日本ハム-広島。引退後は広島、日本ハム、ロッテ、中日、韓国ハンファ、オリックスでコーチ。WBCでは09年、13年と2大会連続でコーチを務めた。

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