田淵幸一氏が分析 ヤクルト・村上は「日本刀」、「なた」の松井との違いと共通点

[ 2022年9月3日 05:30 ]

セ・リーグ   ヤクルト5―0中日 ( 2022年9月2日    神宮 )

<ヤ・中>3回、今季50号となる先制3ランを放ち、ポーズを決める村上(撮影・木村 揚輔)
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 ヤクルト・村上が、シーズン50本塁打を達成。日本人では02年の松井秀喜(巨人)以来、20年ぶりの金字塔となった。ともに高卒ドラフト1位で同じ左打者。2人の打撃の違いはどこにあるのか――。阪神、西武で右の長距離砲として通算474本塁打をマークしたスポニチ本紙評論家・田淵幸一氏(75)が分析した。

 優劣、甲乙はつけがたく、お互いに遜色のないホームラン打者だ。言うなれば松井の打撃が「剛」で村上が「柔」だろうか。

 松井は現役時代、中堅から右方向に引っ張る打球が多かった。「なた」でボールを粉砕するようなイメージ。村上は切れ味鋭い「日本刀」だ。左翼、左中間と逆方向にも一発を運べる。彼の入団当初の打撃を見て、非常に柔らかくて柔軟性があると感じていた。そのイメージは今も変わらない。逆方向だけでなく真っすぐ、変化球にも柔軟に対応できる。

 微動だにしない構えは2人とも同じ。松井は踏み出す右足のかかとでトントンとタイミングを取っていた。無駄な動きが少ないフォームは手元で微妙にボールが動く大リーグでも磨かれただろう。一方の村上は右肘を曲げずにロックして構える。私が45本塁打した74年と同じ形だ。弓を目いっぱい引いたような状態でボールを待つ。上半身をセットし、後は下半身のタイミングで弓を放つだけ。最短距離でバットが出てくる「シンプル・イズ・ベスト」な打ち方だ。

 2人とも選球眼がいいのも共通点。四球が多く、ともに審判を味方につけている。かつてのONがそうだったように“松井が、村上が、見逃すのなら”と微妙なコースも審判はボールと判定してしまう。ただ、松井がプロ5年目までに128本塁打だったのに対し、村上はこの日の50号で154本。まだ22歳、本当に末恐ろしい打者だ。

 ちなみに血液型は2人ともO。王貞治さんもOだった。ものをつくり上げる社長タイプで、自分というものを持っている。村上には、これからもどんどん記録をつくり上げていってもらいたい。

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2022年9月3日のニュース