【内田雅也の追球】輝が近本が見せた 阪神外野陣“しのぎ”の好送球と好位置

[ 2022年9月3日 08:00 ]

セ・リーグ   阪神2ー2巨人 ( 2022年9月2日    甲子園 )

<神・巨>4回2死一、二塁、吉川尚の右前打の打球を捕球後、本塁に送球する佐藤輝(撮影・奥 調)
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 甲子園に阪神ファンの「あと1人」のリズムが響くなか、打球は三遊間を破られ、左前に転がった。9回表、1点は失ったが、まだ1点リードを保っての2死一、二塁。島田海吏の本塁送球は間に合わなかった。

 同点。試合は延長戦にもつれこみ、規定の12回で引き分けた。

 逆転を防ぐため深めの守備位置で、あの打球はどんな外野手でも無理だった。わずかな望みが浮かんだのは、この夜、阪神外野手の好送球が相次いでいたからだ。

 4回表2死一、二塁、吉川尚輝の右前打で三塁を蹴った二塁走者・岡本和真は本塁突入を途中であきらめ、引き返した。右翼手・佐藤輝明から矢のような返球が放たれるのを見たからである。送球はダイレクトで捕手に届いた。突入していればアウトだったろう。

 三塁ベースコーチは腕を回していた。岡本が三塁を蹴る時点で佐藤輝はまだ打球を捕っていなかった。突入判断は定石通りだが、それでも引き返さざるをえないほどのレーザービームだった。

 とにかく、走者を三塁でとどめたことで、2死満塁。続く二遊間ゴロを中野拓夢がグラブを伸ばして好捕、一塁で刺して無失点でしのいだ。

 5回表2死一塁では丸佳浩中前打で三塁を突いた一塁走者・坂本勇人を近本光司がワンバウンド送球で刺した。

 佐藤輝、近本ともに小さなテークバックで素早く投げていた。外野手に送球を指導する外野守備走塁コーチ・筒井壮から聞いた話を思い出した。「外野手は本格派投手のように、いわゆる剛球を投げなければならない。そんな送球のフォームが望まれる。ただ、時には内野手のように小さく鋭い送球が求められる」

 彼らは臨機応援に投げ方を変えていた。「本格派」が内野手のように投げて失点を防いだのだ。

 また、この夜は佐藤輝が右中間への飛球(ライナー性を含む)を再三、捕球していた。それも3度あった(3回表戸郷翔征、7回表大城卓三、8回表丸)。事前の位置取りが奏功した隠れた好守とみている。思えば、筒井には「分析担当」の肩書きもあった。データから打球傾向を分析、指示していたのだろう。

 しのぎ合いの一戦だった。勝てなかったが負けなかった背景には、外野陣の送球と位置取りがあった。=敬称略=(編集委員)

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2022年9月3日のニュース