【レスリング女子】国内代表争いでは苦戦も世界では実力が抜けていた須崎―佐藤満の目

東京五輪第16日　レスリング女子50キロ級決勝 （ 2021年8月7日    幕張メッセ ）

女子50キロ級決勝で相手を攻める須崎優衣（AP）
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　国内の代表争いで苦しんできた須崎だが、世界では抜けた存在だったと思う。小気味よい動き、低いタックル、そしてグラウンドへの移行と高いレベルで磨き上げられており、安心して見ることができた。東京五輪が延期されたことで与えられた1年も、技術向上にうまく使えた印象だ。

　前日は体重コントロールを意識していた乙黒拓だが、決勝はコンディションも良かった。低い姿勢からの高速タックルに加え、抜群のボディーバランスが武器。相手のアリエフは組み手では崩せない選手で、離れた位置からのタックルという戦術も生きたと思う。

　男女合わせて5個の金メダルを獲得したが、須崎、向田、乙黒拓と3個はエリートアカデミー出身選手によるもの。ジュニア時代から世界トップクラスの選手たちを間近で見てきた成果は大きい。そして、大きなレガシーを残してくれたのは屋比久の銅メダルだ。泥くさい戦い方でも勝ち抜けるという日本レスリングの原点を見せてくれた。乙黒拓や文田のような高い技術レベルを持つ選手が、この原点を見直してくれれば、3年後のパリはもっと楽しみになると思う。（88年ソウル五輪フリー52キロ級金メダリスト、12年ロンドン五輪チームリーダー、専大教授）