東京五輪 開催危機 新型コロナ「パンデミック」宣言 早期終息見通せず

[ 2020年3月13日 05:30 ]

聖火を掲げて走るリレー第2走者の野口みずきさん(AP)
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 東京五輪・パラリンピック開催の危機だ。世界保健機関(WHO)は11日、新型コロナウイルス感染症を世界的大流行を示す「パンデミック」と表現した。米プロバスケットボールNBAは選手に感染者が出て、レギュラーシーズンを12日から中断し、トランプ米大統領も英国を除く欧州からの外国人入国を一時停止すると発表。世界各国で厳しい対応が打ち出され、7月24日開幕の東京五輪も延期や中止、無観客開催などの選択を迫られる可能性が出てきた。 

 ジュネーブに本部を置くWHOのテドロス事務局長は新型コロナウイルス感染症に関して「パンデミックと表現できるとの判断に至った」と表明した。感染が世界に拡大して早期終息が見通せなくなってきた現状を受け、WHOの規定上存在しない表現をあえて用いることで強い危機感を示し、各国に一層の取り組み強化を促した。

 この日を境に一気に世界の緊張が高まった。NBAは選手に陽性反応が出た試合を含む11日の2試合が延期となり、リーグは12日からの中断を即座に決定。26日に30球団が一斉に開幕を迎える大リーグも、マリナーズは本拠地シアトルでの開幕戦開催を断念した。北米のプロスポーツ界はパニックだ。

 トランプ米大統領は感染拡大防止へ英国を除く欧州から米国への入国を13日から30日間停止すると発表。欧米諸国の交流が滞れば、世界のスポーツ界はさらに大きな影響を受けるのは必至だ。世界の感染者数は約12万人で死者は約4380人。テドロス氏は「感染者や死者、国の数は今後も増えるとみられる」と予測した。
 
 12日にはギリシャで採火式が行われ、東京五輪の聖火リレーがスタートしたが、五輪開催を巡る状況は危険水域に達しつつある。東京都の小池百合子知事は五輪・パラリンピック開催に関し「これまでの準備や国民の思いを考えると、中止はまずあり得ない」と訴えた一方で、今回のパンデミック宣言が開催を巡る議論に及ぼす可能性に触れ「影響はあると思う」と指摘。2020年東京五輪・パラリンピック組織委員会幹部は「関係機関と連携して大会準備に努めていく」と語ったが、「五輪に限らず世界的なイベントは難しい」と漏らす大会関係者もいた。前日11日には組織委理事の高橋治之氏が「現実を踏まえ、それなりに対応しないと」と2年延期の選択肢に言及したばかりだった。

 止まらない感染拡大。7月24日、聖火は無事国立競技場にたどり着くのだろうか。

 ▼パンデミック ギリシャ語のパン(全ての)とデモス(人々)が語源の英語で、世界中の人に感染する可能性がある病気が、制御不能で大規模に流行している状態。WHOがパンデミックを表明するのは2009年の新型インフルエンザ以来で、コロナウイルスが原因の感染症に対しては初めてとなった。

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