つなげる東京五輪の火…日本人最初のランナー・野口みずきさん「一生忘れない」26日福島から全国へ

[ 2020年3月13日 05:30 ]

聖火を掲げて走るリレー第2走者の野口みずきさん(AP)
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 東京五輪の聖火採火式が12日、古代五輪発祥の地、ギリシャのオリンピア遺跡で行われた。新型コロナウイルスの世界的な感染拡大が「パンデミック」と表明され、五輪開催を懸念する声が高まる中、式典は大幅に規模を縮小し、異例の無観客で実施された。ギリシャ国内での聖火リレーもスタートし、日本人最初の聖火ランナーとして04年アテネ五輪女子マラソン金メダルの野口みずきさん(41)が第2走者を務めた。

 東京五輪最初の日本人聖火ランナーという名誉をかみしめるように、野口さんはゆっくりとスタートした。近代五輪の父と呼ばれるクーベルタン男爵の記念碑の近くで、16年リオ五輪射撃金メダリストの第1走者アナ・コラカキ(ギリシャ)と“トーチキス”。青空の下、「気持ちがわき上がった」とトーチを右手に掲げ、古代五輪の遺跡を眼下に眺める約200メートルを走った。

 野口さんにとってギリシャは五輪の金メダルを獲得した思い出の地。「今回の方が緊張した。アテネ五輪の時はワクワク感が大きかったが、今回はドキドキという感じ」。今も1カ月に約200キロを走っており、この日の朝も8キロをランニングして備えた。「五輪のふるさとに戻ってきたような感じで、かみしめながら走った。こんな大役は、なかなかない。この空気を感じながら、一生忘れないぞと思いながら走った」と振り返り、「東京五輪はみんなが楽しみにしている。諦めずに希望を持って、無事に開催されるよう祈っている」と話した。

 ヘラ神殿で行われた採火式には関係者ら100人だけが出席。通常なら1000人以上が参加するが、警察官らが会場周辺を厳重に警備し、物々しい雰囲気に包まれた。式は古代五輪の儀式にのっとり、古代の衣装を身にまとったみこ役の女性が「東京のために光を届けて」と太陽神に祈願。反射鏡で太陽光を集め、トーチに灯をともした。IOCのバッハ会長は「厳しい状況の中でも採火式ができて感謝している」とあいさつ。東日本大震災に触れ「五輪は日本国民、特に9年前に震災に遭った地域にとって再び希望と自信の象徴になる」と語ると、最後は日本語で「オリンピックの精神を東京で一緒に祝いましょう」と呼びかけた。

 ギリシャ国内で1週間リレーされた聖火は19日にアテネで日本側に引き継がれ、20日に宮城県に到着。日本国内の聖火リレーは26日に福島・Jヴィレッジからスタートする。

 ◆野口 みずき(のぐち・みずき)1978年(昭53)7月3日生まれ、三重県伊勢市出身の41歳。女子マラソンで03年世界選手権銀メダル。04年アテネ五輪で金メダルに輝き、05年ベルリンで2時間19分12秒の日本記録を樹立。08年北京五輪は故障で欠場。その後はケガに悩まされ、リオ五輪代表を逃した16年に引退した。19年からは岩谷産業陸上部のアドバイザーを務める。

 【東京五輪の聖火リレー】採火式の後、ギリシャ国内の名所旧跡を巡り、19日にアテネで柔道の野村忠宏さん、レスリングの吉田沙保里さんが聖火ランナーを務め日本側に引き継ぐ。20日に宮城県の航空自衛隊松島基地に到着後、東日本大震災で被災した宮城、岩手、福島で「復興の火」として展示。26日に福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」をスタートし、47都道府県を巡って7月24日の開会式で東京・国立競技場の聖火台に点火される。桜の花をモチーフにしたトーチは長さ71センチ、重さ1・2キロ。被災地の仮設住宅で使用したアルミの廃材を再利用。一部区間で五輪史上初めて燃料に水素を用いる。

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