NBAのナショナルライターが指摘 八村 けがするまで「新人王候補の1人になっていたでしょう」

[ 2020年1月17日 06:00 ]

ウィザーズの八村(AP)
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 NBAウィザーズの八村塁(21)のルーキーイヤーを分析する単独インタビュー第2弾は、全米紙USA TODAYのジェフ・ジルギット記者。1995年から同紙でNBAのナショナルライターを務める同記者は、鼠径(そけい)部の負傷による離脱前まで八村は新人王候補の1人だったと指摘。八村の将来像として、昨季で引退したリーグを代表する万能パワーフォワード、クリス・ボッシュ氏(35)の名を挙げた。(ワシントンDC・杉浦大介通信員)

 ――今季ここまでのウィザーズをどう評価していますか。

 「良いチームとは言えませんが、ハードにプレーすること、見ているものを喜ばせるゲームをすることは評価できます。また、最近ではヒート、セルティックス、ナゲッツといった好チームにも勝てることを示してきました。今季のウィザーズの主眼は、若手を育て、このリーグで長くプレーしていける選手を見つけること。ブラッドリー・ビール、ジョン・ウォール、そして八村塁が今後のウィザーズの中心になっていくとして、その周囲にどういった選手を配置するか。そういった考えで見ていくと、イシュ・スミス、ギャリソン・マシューズ、ジョーダン・マクレーといった選手たちが頭角を表していることは意味を持ってくるかもしれません。彼らのうちの何人かが今後も実力を証明し、ロースターに残れば、来季はより層の厚いチームができ上がるのです」

 ――八村はしばらく戦列を離れていますが、離脱前までのプレーをどう見ていましたか。

 「故障をせず、離脱前までのプレーを続けていたら、彼は新人王候補の1人になっていたでしょう。ザイオン・ウィリアムソン(ペリカンズ)が故障離脱した後、ジャ・モラント(グリズリーズ)が新人王有力候補であることは誰もが認めていること。ただ、塁がとても良いルーキーシーズンを過ごしていたことも誰も否定できないはずです。新人王受賞は難しかったとしても、オフェンス面、リバウンドの貢献を考えれば、オールNBAルーキーチーム入り、オールスターでのルーキーチャレンジ出場などは有望でした。特に(全体9位という)指名順を考えれば、ウィザーズは好選手を手に入れたと言えるでしょう。来季以降もチームの中心を担っていくと私は見ています」

 ――八村の能力の中で特に印象に残る部分は。

 「コート上のさまざまな位置から得点できる能力です。ミッドレンジのうまさはもう定評を勝ち得ているし、ローポストからも得点が稼げる。ロングジャンパーは苦手ですが、今のプレーぶりを見る限り、いずれ3ポイントシュートも向上するでしょう。このまま研ぎ澄ませれば、とても良いオフェンシブ・プレーヤーになっていくはずです。一方、ディフェンス面で課題はありますが、それは八村に限らず、NBAでルーキーが経験豊富な選手を相手に守備面で貢献するのはもともと容易ではありません。今後、ペイント内での守備、ピック&ロールの守り方を学んでいく必要はありますが、それらでも向上し、八村にはいずれ優れたツーウエープレーヤー(攻守両面で優れた選手)になっていく可能性があると思っています」

 ――長くNBAを取材してきたあなたから見て、八村の比較対象としては誰がふさわしいですか。

 「それについてはもう少しじっくり考えれなければいけませんが、今、真っ先に頭に浮かんだのはクリス・ボッシュです。ボッシュはもともとミドルレンジのシュートとポストプレーが得意なパワーフォワードで、キャリアの途中から3ポイントも打つようになりました。得点の方法を知っていて、ディフェンスも優れていました。塁もスキルに定評があったボッシュのように成長していくかもしれません」

 ――八村選手の伸びしろの上限はどのあたりだと感じていますか。オールスターレベルか、グッドプレーヤーか、ローテーションプレーヤーか。

 「ローテーションプレーヤーよりは上でしょう。オールスターからグッドプレーヤーの間のどこかに位置することになるのではないかと思います。その中のどのぐらいかは現時点では分かりません。ただ、これまでの彼を見てきて、オールスターレベルまで成長するのが不可能だと感じさせる要素はありません。そこまで到達できるかは判断できませんが、今後が楽しみな選手であることは間違いありません」

 ――ビールと再契約し、来季はウォールも復帰し、さらに八村、ブライアント、ブラウンといった伸び盛りの若手をそろえたウィザーズは来季以降に向上していけると感じますか。

 「はい、彼らは良くなっていくと思います。そういったロースターを組み立てていることに関し、トミー・シェパードGMを評価しなければいけません。今季に関しては、ダビス・ベルターンスという優れたシューターを見つけてきたことも大きかったですね。このまま順調にいけば、来季はプレーオフ進出がウィザーズにとって現実的な目標になるでしょう」

 ◆クリス・ボッシュ 1984年3月24日生まれ、米テキサス州ダラス出身の35歳。ジョージア工科大出身。2003年NBAドラフト全体4位指名でラプターズに加入し、1年目でオールルーキーチームに選出。10年にFAでヒートへ移籍し、12、13年とNBAファイナル2連覇に貢献。オールスターゲーム出場11回。米国代表では08年北京五輪で金メダルを獲得。血栓症のため19年2月に引退発表。ヒートは背番号1を永久欠番とした。現役時は2メートル11、107キロ。

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