【佐藤満の目】厳しい練習が実を結んだ3人の逆転勝ち

[ 2016年8月19日 09:00 ]

リオ五輪<女子レスリング48キロ決勝>逆転のタックルを決める登坂
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リオデジャネイロ五輪レスリング

(8月17日)
 3階級すべて、決勝は逆転勝ちでの金メダルだった。まずは世界一の練習量に裏付けられたスタミナで最後まで攻め切った日本女子の底力に、心から敬意を表したい。

 4連覇を達成した伊調、決して調子は良くなかった。まず、構えが腰高になっており、いつもの安定感がなかった。脚から手に伝わるような動き、つまり下から上が基本の組み手も、上から下になってしまい、攻撃にリズムも生まれなかった。首の故障による練習不足も影響したのだろうが、何より偉業に対する重圧が見受けられた。

 最後の最後に伊調を救ったのは、アテネ五輪優勝から変わらぬ、持ち前のディフェンス能力の高さだった。伊調の特長は重心の移動がうまく、相手が力をかけてくる方向に細かく重心を移動し、対応すること。だから相手は体重以上に重さを感じているはずだ。決勝の逆転シーンは伊調が先にタックルで攻めたところを相手が切り、カウンターで攻めようとしたところ。それをさらに切り返してポイントに結びつけられたのは、重心移動の巧みさでつねに動ける状態だったからだ。

 世界選手権で3連覇している登坂は勝負どころの集中力が素晴らしかった。組み手がうまく体力もあり、スタンド(立ち技)もグラウンド(寝技)もできる登坂は典型的オールラウンダー。決勝の相手スタドニクは試合開始から一気に来たが、第1ピリオドを1失点で切り抜けた防御も勝利につながった。今後の課題は攻撃の回数を増やすこと。先にポイントを奪えば試合運びに余裕が生まれ、接戦やもつれた状態も少なくなり、ケガも減るだろう。

 3人の優勝者で最も成長を感じたのは土性だ。タックルが武器だが、以前は正面から入ったところをつぶされ失点するケースもあった。だが今大会では相手の腕をたぐりながらバランスを崩すなど、攻撃のバリエーションが増え、頂点に立った。登坂同様、五輪連覇も狙える年代。今後の課題はタックルを切られたあとの処理と、得意な寝技を身につけることも必要だろう。 (88年ソウル五輪フリー52キロ級金メダリスト、前日本男子強化委員長、専大教授)

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