「どうする家康」開戦10万の兵もフルCG表現!大河異例のロケなし&全編VFX関ヶ原 演出語る舞台裏

[ 2023年11月12日 20:45 ]

大河ドラマ「どうする家康」第43話。「関ヶ原の戦い」が「午前 開戦」。デジタル撮影技術「バーチャルプロダクション(VP)」を駆使、CG映像による直前の“空撮シーン”は10万の兵を表現(C)NHK
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 嵐の松本潤(40)が主演を務めるNHK大河ドラマ「どうする家康」(日曜後8・00)は12日、第43話が放送され、ついにクライマックスの「関ヶ原の戦い」(慶長5年、1600年)が描かれた。計約20分にわたった合戦シーン(各陣営の場面も含む)はロケを実施しない“異例&異色の関ヶ原”。大河史上初の本格導入となったデジタル撮影技術「バーチャルプロダクション(VP)」を駆使し、全編を描き切った。演出統括&VP統括の加藤拓監督に舞台裏を聞いた。

 ■「バーチャルプロダクション(VP)」とは

 「VFX(Visual Effects)」とは「視覚効果、特殊効果」のこと。今回、本格的に導入された「バーチャルプロダクション(VP)」とは、屋外風景などのCG映像が映し出された「巨大LEDウォール」をセットの背景に置き、その前でキャストが演じる様子を撮影。スタジオにいながら、実際その場所にいるような臨場感、リアリティーあふれる映像を創出。そのクオリティーは「グリーンバック」を用いた「クロマキー合成」と全く異なる。

 「どうする家康」で使用した巨大LEDウォールは横20メートル(最大25メートル)、高さ6メートル。撮影時には、NHKのスタジオ内に巨大LEDウォールが1つ設置された。

 巨大LEDウォールに映し出されたCG映像がカメラと連動して動くものを「インカメラVFX」、カメラと連動しないCG映像を背景とするものを「スクリーン・プロセス」と呼ぶ。

 「どうする家康」全シーンのうち、巨大LEDウォールを用いたのは9割以上。第43話「関ヶ原の戦い」全編400カットのうち、グリーンバックによるVFXはわずか25カットほど。他の回も同程度といい、VPがいかに“戦力”となったかが分かる。

 「働き方改革」と「映像表現の追究」の両立から今作において本格導入。天候待ちや酷暑などロケのリスクも回避可能となり「初期投資は必要ですけど、人的コストも含めて、クリエイティビティーとの兼ね合いを長期的に考えた時、大規模ロケよりVPの方が分がいいんじゃないか、と今回の挑戦に至ったわけです。イニシャルコスト(初期投資)を除いて、番組単体の制作費で比べれば、VPを導入した『どうする家康』が従来の大河の倍もかかったというようなことは全然ありません。スタジオの運営効率がどんどんよくなっていったので、最終的には初期投資した分で10%増しぐらいになるんじゃないでしょうか。イニシャルコストの開発費もロケに行かなかった分で相殺されていて、照明の電力量も従来の大河の10分の1。そのぐらい環境負荷は減っているんです」

 ■「どうする家康」の関ヶ原

 今作は第1話「どうする桶狭間」(1月8日)で「桶狭間の戦い」(永禄3年、1560年)、第15話「姉川でどうする!」(4月23日)で「姉川の戦い」(元亀元年、1570年)、第17話「三方ヶ原合戦」(5月14日)で「三方ヶ原の戦い」(元亀3年、1572年)、第22話「設楽原の戦い」(6月11日)で「長篠・設楽原の戦い」(天正3年、1575年)、第32話「小牧長久手の激闘」(8月20日)で「小牧・長久手の戦い」(天正12年、1584年)と、ロケは一部のみ。この日の関ヶ原もVPを駆使し、スペクタクルな合戦シーンを活写してきた。

 大河の関ヶ原としては「葵 徳川三代」(00年)が“伝説のロケ”を敢行。初回45分間にわたって合戦の模様を描き、第2回以降で関ヶ原に至るドラマが展開されるという構成だった。1次ロケはエキストラ260人、馬60頭。使用された旗は4000本。2次ロケに投入された馬は延べ550頭に上り、大河史上最大規模の撮影となった。

 今作はロケなしの関ヶ原。今年2月、合戦シーンに用いる映像をまとめて撮影した。

 「設楽原の戦い」以降の大軍の行軍や陣形、戦闘シーンなど「65パターンくらいの合戦映像を4日間で一気に撮影しました。内心、足りない場面があると言われたら、どうしようと思っていましたが、杞憂に終わりました(笑)。スタジオに集まっていただいたのは60人ぐらい。関ヶ原は東軍でも、先陣の井伊直政勢、本多忠勝勢など部隊によって旗が違うんですけど、VPだと、あっという間に変えられます。ロケだと、それだけでも大変ですよね。家康が布陣した桃配山や三成の笹尾山の陣形も、バーチャルプロダクションで表現しました。関ヶ原が東西の旗で埋め尽くされる壮大な風景は、今まで見たことのない映像になったと思います」

 開始18分の「午前 開戦」。上空から関ヶ原をとらえたシーンのフルCG映像は10万以上の兵を描写した。VFXチームが今回、最も力を注いだ場面という。他の合戦シーンは人の目線の高さから撮るため、平均2000~4000人、最大1万人。いずれにしても、VPだから叶った映像だ。

 前代未聞のチャレンジに取り掛かったのが21年夏。最初は巨大LEDウォールにCG映像が映らないなど「絶望的」と振り返ったが、「“戦国の景色”を変える」をテーマに、試行錯誤。合戦シーン以外にも、三河武士が泥まみれになった小牧・長久手の“謎の堀”造り、大坂城をはじめとする安土桃山文化の室内装飾の豪華絢爛さや空間の奥行きなども見事に表現した。

 「家康の“戦人生”は地方大会から全国大会の決勝に駒を進めていくようなもの。兵馬の数も桁違いに増えていくんです。大河の大規模ロケは1作品で2回できればいいぐらいなので、VPでなければ、桶狭間から大坂の陣まで、すべて描き切るのは不可能だったと思います。スタッフも、キャストの皆さんも、VPの使い方に慣れていって、最終的には結構うまくいったんじゃないでしょうか」と手応えを語った。

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