師匠が命名 藤井将棋は「3Dアイ」 メッツ・千賀のお化けフォークのような「立体的な駒の使い方」

[ 2023年6月9日 05:08 ]

杉本昌隆八段(左)と藤井聡太王将

 今月1日に史上2人目の7冠を達成した藤井聡太王将(20)=名人、竜王、王位、叡王、棋王、棋聖含む=の師匠・杉本昌隆八段(54)がスポニチ本紙の取材に応じ、藤井将棋の代名詞を「3Dアイ(3次元の目)」と命名した。縦横だけでなく、斜めに動く角と桂馬の活用を取り上げ、その切れ味を大リーグ・メッツの千賀滉大投手(30)のお化けフォークに例えた。

 1日に7冠目となる名人を奪った藤井は、タイトル獲得期数を15に伸ばした。20歳にして歴代7位に相当し、6位・故米長邦雄永世棋聖の19期も今年度中に到達する可能性がある。すでに「史上最強」の声もある藤井将棋だが、不思議なことに代名詞はまだない。

 そこで杉本が命名するのが「3Dアイ」だ。その特徴を「角桂の斜めに動く駒の活用」とし、縦、横の2次元だけではない「立体的な駒の使い方。野球で言う見えないフォーク、千賀投手のように」と同じ愛知県出身で大リーグ・メッツの千賀のお化けフォークをイメージした。

 実際に渡辺明九段(39)から名人を奪った第5局は2枚角の活用が光った。そして羽生善治九段(52)を挑戦者に迎え、3勝2敗で初防衛へ王手をかけた2月の本社主催・第72期ALSOK杯王将戦7番勝負第5局もその好例だ。

 41手目▲4五桂(第1図)。本紙観戦記者の関口武史氏が「インパクトがあったと思う。3七桂を跳ねると、逆に△3七歩が怖い。羽生九段も(▲4五桂を)軽視されていた」と回想するなど、藤井に使えて羽生に使えなかった「3Dアイ」が7番勝負を方向付けた格好だった。

 12日にエッセー集「師匠はつらいよ 藤井聡太のいる日常」(文芸春秋社)を刊行する杉本は、文中で「スケールの大きな異名を模索中」と触れている。実は藤井が四段だった16年に「3Dアイ」を唱えたことがあるという。「格好いいかなと命名したが全く浸透しなかった」と嘆くが、7年の時を経てついに日の目を見るときがきた。

 もう一つ、藤井将棋の特徴としたのが王の攻撃参加。今度はサッカーに例えて「キーパーが攻める」。つまり、ビルドアップか。
 王という駒の特性を根本から問い直した結果だとし、序盤から深く囲いに収まった「守られるべき駒」ではなく「攻撃にも使う駒」。結果的に王の価値を引き上げたと分析した。長くそばで見守る師匠の指摘は、藤井将棋の魅力をより高めそうだ。 (筒崎 嘉一)

 ≪8冠独占確率50%超?≫7冠になった藤井は5日、ベトナムでの棋聖戦第1局に勝利した。そして7月からは王位戦も開幕。それと並行し、最後の1冠・王座戦の挑戦権決定トーナメントも戦う。8強進出し、挑戦まであと3勝。では全8冠独占の可能性は?「ここまでの実績から、挑戦者になれば獲る雰囲気はある」。つまり杉本は負ければ即アウトのトーナメントでの残り3勝に注目する。数字上の確率は12・5%。「ただ(全8冠独占は)5割以上あると思えてしまう。51、52%くらいなら許される信頼感はある」との見立てだった。

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