藤井王将 喧嘩上等!羽生九段必殺・横歩取りにお返し“三次元殺法”4五桂 駒損覚悟“殴り合い”のゴング

[ 2023年2月26日 05:00 ]

第72期ALSOK杯王将戦第5局第1日 ( 2023年2月25日    島根県大田市「さんべ荘」 )

熟考する藤井王将 
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 藤井聡太王将(20)=竜王、王位、叡王、棋聖含む5冠=に羽生善治九段(52)が挑む将棋の第72期ALSOK杯王将戦(スポーツニッポン新聞社、毎日新聞社主催)第5局は25日、島根県大田市の「さんべ荘」で第1日が始まり、昼食休憩を挟んで藤井から決断の桂跳ねが飛び出した。昼食休憩を挟むちょうど2時間、実質3時間考えた41手目▲4五桂(第1図)。封じ手の局面は終盤の入り口を迎えている。対戦成績2勝2敗で迎え、26日の第2日、シリーズ制覇へ先に王手をかける棋士が決まる。

 映像で見守った控室が「その手かぁ~」とどよめいた。立会人の福崎文吾九段(63)は「このシリーズで一番のビックリでした」と過去4局と比較し、絞り出した。

 大田の大あなご重を味わった昼食休憩明け。藤井から活力に満ち満ちた一手が飛び出した。昼食前の50分に1時間の休憩、さらに70分の考慮を経て▲4五桂と跳ね出した。

 「どこかで攻めていく将棋です。それがどこかと考えていたので」。封じ手後、藤井は拍子抜けするほどの笑顔で応じた。▲2三歩成、▲2五飛も候補。▲4五桂はより直接的に王頭へ働きかけた。

 「単騎で行く、牛若丸のような身の軽さ、軽快さ。7番勝負、運命の一手です」と福崎は驚きを表現。副立会人の西川和宏六段(36)は大盤解説で「思い切り戦う殴り合いの手で、凄いことになります」と語った。△2七歩成、▲同銀、△3七角成が見えるのに「喧嘩(けんか)上等」の藤井の気合だった。

 指し手の衝撃度を示すように、自らを超える長考へ羽生をいざなう。2時間21分を消費させ、残り1時間足らずで終盤の入り口までなだれ込んだ。「駒損の攻めなので。攻めが続くかどうかです」。封じ手の局面はさらに4五桂を成り捨て、勝敗の佳境を迎えている。

 「直線対曲線」。羽生将棋を語る言葉に「羽生マジック」がある。相手を選択肢の多い局面へ誘い、逆転打を放つえん曲的な指し回し。対して藤井は「光速の寄せ」がある谷川浩司17世名人(60)を思わせる最短距離の踏み込み。師匠の杉本昌隆八段(54)は「三次元の読み」とも言った。

 角桂の巧みな操縦術をその特徴として挙げ、目につきやすい縦横ではなく斜めへ進む駒の立体的な活用を指摘した。▲4五桂はまさに三次元の読みだろうか。

 戦型は羽生の主導で横歩取りになった。「可能性としてあるのかなと思っていました」。羽生の選択は織り込み済み。あうんの呼吸を証明するように、開始1時間ほどで飛車と角の大駒が2枚とも交換され、双方の駒台へ。20歳は仕掛けられた「打ち合い」を買い、過激に攻め合った。

 後手横歩取りが十八番の羽生に対し、藤井も先手横歩取りは12連勝中。強気と強気がぶつかる激戦になった。(筒崎 嘉一)

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