「大河ドラマが生まれた日」生田斗真 「この頃の熱さを忘れてはいけない」

[ 2023年2月2日 08:30 ]

ドラマ「大河ドラマが生まれた日」で、山岡進平役を演じる生田斗真(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】NHKのテレビ70年記念ドラマ「大河ドラマが生まれた日」(4日後7・30)で、大河第1作「花の生涯」の制作に挑む人々の姿が描かれる。

 「花の生涯」は1963年の作品。主演の尾上松緑さんをはじめ、淡島千景さん、佐田啓二さん、八千草薫さんらが出演。幕末に開国を主張し、桜田門外の変で果てた大老・井伊直弼の生涯を、周りの女性たちを絡ませて描いた。

 「大河ドラマが生まれた日」には佐田さんの長男で俳優の中井貴一(61)が「映画に負けない新しい連続大型時代劇を作れ」と大号令を発するNHK芸能局長・成島庭一郎役で出演している。

 中井は「僕が今この仕事をしている意味は、佐田啓二という名前を、僕を通して少しでも知ってもらうためなんだと思うことが時々あります。今回のドラマをたぶん父も喜んでくれている気がします」と話す。

 撮影に参加したのは1日だけだったが、その日はくしくも佐田さんの祥月命日だったという。

 このドラマの主人公、アシスタントディレクター・山岡進平役の俳優・生田斗真(38)は中井との共演について「初めてご一緒させていただいて『わ、中井貴一さんだ。本物だ!』と思いました。品があって、華があって、色気があって、何より腕がある。ほかにはいないようなタイプの役者さんで、圧倒されて、セリフを言う時に少し緊張してしまいました。出演してくださってうれしかったですし、僕の宝になりました」と語る。

 プロデューサー・楠田欽治役の俳優・阿部サダヲ(52)も「ご一緒できてうれしかったです。実は僕の中学の卒業アルバムに、中井さんの写真が載っているんです。クラスのみんなと鎌倉に行った時に中井さんがいらっしゃって『一緒に写真を撮ってもいいですか』とお願いしたら『いいよ』と気さくに応じてくれたんです。だから、昔から優しい方だと思っていました。このドラマでの共演シーンも、僕の芝居を受け止めてくださって、ありがたかったです」と感謝の思いを表した。

 ドラマで佐田さん役を演じているのは歌舞伎俳優・中村七之助(39)。中井から佐田さんの形見の腕時計を託され、それを身につけて撮影に臨んだ。

 七之助は「腕時計に、佐田さん、中井さん、中井貴恵さん、佐田さんを好きだったファンの方々の思いが宿っていると感じ、パワーをもらいました。撮影の現場に本物があると、演じる役者にとっても大きな力になります」と話す。

 生田は「七之助さんは同じ高校のひとつ上の先輩で、その時からの旧知の仲です。今回は佐田さんを演じるということで強い責任感を抱いているように感じましたし、時計の重みも強く感じていたと思います。七之助さんは歌舞伎役者として映像に対する不安な感じをずっと抱えている方なのですが、それが『花の生涯』でテレビの世界に初めて踏み込む佐田さんの恐れ、わくわくする気持ちと重なって見えました」と語る。

 阿部は「佐田さんとはお会いしたことがありませんが、こういう人なんじゃないかと思わせてくれる七之助さんの芝居でした。落ち着きがあって、ウイスキーを飲ませてくれるシーンがあるんですが、その感じがとても良かったです」と話す。

 ドラマでは、楠田(阿部)と山岡(生田)が、成島(中井)の命令を受け、連続大型時代劇の制作に着手。当時の「五社協定」の壁で配役が難航し、佐田(七之助)を口説き落とすのに苦労した末、ようやく「花の生涯」の撮影開始にこぎつける。

 生田は当時の撮影方法で印象に残ることについて「今は本番でカメラが回り始めてから芝居が始まるまで数えるのはせいぜい5秒ですが、あの時代は30秒前から数えていました。役者が30秒もじーっと待っているのはドキドキするだろうと思いました」と笑う。

 阿部は「桜田門外の変のシーンで、雪が降ったように見せるため、瓦を絵の具で白く塗って、地面に白い布をかぶせました。撮影では、みんなで何回も白い布を持って走りました。それが本当に雪に見えるのが面白いです」と語る。

 このドラマからはテレビ創成期の役者やスタッフの熱量が伝わってくる。

 生田は「この頃の熱さを忘れてはいけません。テレビはこれからどう変わるのか、岐路に立っていると思います。人によって『もう1回頑張ろう』『今も負けていない』と捉え方が違うと思います。視聴者のみなさんにどう捉えていただけるか楽しみです」と語る。

 阿部は「セリフにもあるように『小さい子供から、おじいちゃん、おばあちゃんまで見られるようなものを作りたい』という熱い思いが伝わるドラマ、実際に幅広い年齢層に見てもらえるドラマです」と強調する。

 ドラマ放送翌日の5日には、最新のAI技術でカラー化された「花の生涯」の第1話とクライマックスの「桜田門外の変」の一部が放送される。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局総合コンテンツ部専門委員。テレビやラジオ、映画、音楽などを担当。

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2023年2月2日のニュース