目標の100歳目前で…内海桂子さん、教えてくれた観察眼の大切さ

[ 2020年8月28日 08:30 ]

スポニチ本紙で連載していた内海桂子さん「もうすぐ100歳 今ならわかる 幸せ呼ぶ100の金言」
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 女流漫才コンビ「桂子・好江」で人気を博し、アラ百の現役最年長芸人として活躍した漫才協会名誉会長の内海桂子(うつみ・けいこ、本名安藤良子=あんどう・よしこ)さんが22日午後11時39分、都内の病院で多臓器不全のため死去した。97歳。東京都出身。近親者のみの密葬が27日、東京・町屋斎場で営まれた。

 【悼む】東京・浅草に近い一軒家。ここで桂子師匠とちゃぶ台を挟んで向き合った日々を思い出す。「仕事する時には相手を観察して人と違う何かを示していかないといけない。そうすれば、いい仕事ができるよ」。きっぷの良い話し方と師匠の笑顔が今もはっきり浮かんでくる。

 スポニチでは2018年4月から連載コラム「もうすぐ100歳 今なら分かる 幸せ呼ぶ100の金言」をスタート。連絡係だった夫の成田さんが倒れるまで用意ができた4月18日付分の44回にわたって金言を記してくれた。このコラムの打ち合わせで私は約2年、自宅に通った。師匠の観察眼の力強さが印象に残っている。中でもインパクトがあったのは初舞台でツッコミを生み出した日のことだ。

 「そうそう、はいはいだけじゃない返しをしてみた方がいいのに」。舞台袖で他人の漫才を見て師匠はこう思っていたという。そのため、16歳で踏んだ初舞台で夫婦(めおと)漫才の代役を務めた時、いつもは「はいはい」のところを「それからどうしたのよ!」と突っ込んだ。急な「待った」に旦那はオロオロ。その姿に会場は大ウケで人気者になった。漫才のツッコミはすでに誕生していたが、そのことを知らない少女が現代漫才の基本ともなる形を偶発的に行っていた。

 そのことに驚く私に「観察すると、何が求められるのか分かってくるものだよ」と師匠は涼しい顔。子供の頃から冷静に素直に状況を把握し的確に言葉を発する力があった。だからこそ、97歳になってもツイッターで49万人ものフォロワーがいる存在になれたのだろう。

 目標だった100歳には届かなかった。卓越した観察眼でもっといろいろなことに突っ込んでほしかった。師匠の言葉がもう聞けないことが残念でならない。(文化社会部デスク・鈴木 美香)

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