藤井棋聖、大舞台で静かなる熱闘 木村王位の猛攻に1時間27分の長考

[ 2020年8月20日 05:30 ]

第61期王位戦7番勝負第4局第1日 ( 2020年8月19日    福岡市中央区 )

封じ手を立会人の中田功八段(右)に手渡す藤井棋聖。奥は木村王位(日本将棋連盟提供)
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 木村一基王位(47)に藤井聡太棋聖(18)が挑む第61期王位戦7番勝負第4局が19日、福岡市の大濠公園能楽堂で行われ、後手の藤井が42手目を封じて1日目を終えた。3連敗で後がない「千駄ケ谷の受け師」木村が「相掛かり」に誘導し、互角の難しい読み合いを続けた。藤井は史上最年少の2冠獲得を懸け、20日午前9時からの2日目に挑む。

 2冠への気負いはみじんも見せず、普段通り落ち着いた面持ちで登場した藤井。「オーラがまぶしい」とネットで話題となるほど、淡い緑色の羽織が会場の能楽堂に神々しく映えた。19日付スポニチ本紙が報じた師匠・杉本昌隆八段から贈られた“勝負服”で恩師の応援を背に決戦の場に入った。

 福岡市の最高気温はこの日も34・5度を記録。盤上でも、1日目から外の熱気に負けない熱い駆け引きが行われた。

 先手の木村が誘導した戦型は第2局でも採用した十八番の「相掛かり」。前回は逆転して最終的に白星こそ手にしたものの大苦戦を強いられており、ここも再び繰り出されるとの想定は頭の中にあったはずだ。だが「千駄ケ谷の受け師」が、1筋で序盤から手をつくろうとするなど、繰り出してきたのは猛烈な攻め。こちらは想定外だったのか、頭を垂れたり、扇子をクルクルと回すなどして苦悶(くもん)の表情で、1時間27分の長考を強いられた。

 さらに午後6時、1日目の封じ手時間を手番で迎えたが、36分も消費し、定刻を19分も過ぎてからようやく決断した。飛車切りの選択を迫られる緊迫した局面だったため、時間をかけるのは当然とみる向きもある一方、木村を疑心暗鬼にさせる時間になった可能性を指摘する声もある。

 7月19日で18歳となったばかりの藤井は、羽生善治九段(49)が持つ最年少2冠(21歳11カ月)、加藤一二三・九段(80)の最年少八段昇格(18歳3カ月)を18歳1カ月で更新する。ほかにもう一つの“記録”もある。過去に10代でタイトルを獲得したのは羽生善治九段、藤井に塗り替えられるまで最年少タイトル挑戦・獲得棋士だった屋敷伸之九段に自身を加えた3人しかいない。実はその中に番勝負ストレート勝ちで成し遂げた者はいなかった。20日に勝利を挙げ、無傷の4連勝で王位を手にすれば快挙となる。本人は記録を「意識することはない」と無関心だが、ファンの期待は高い。

 持ち時間各8時間のうち、残り時間は木村が4時間14分、藤井が3時間53分。この日は互角で続いた局面がどこでヒートアップするのか。2日目も猛暑列島の熱視線がここ福岡に集まる。(窪田 信)

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