テイラー・スウィフト アルバム「フォークロア」と3度目のグラミー

[ 2020年8月20日 10:00 ]

アルバム「フォークロア」をリリースしたテイラー・スウィフト
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 【牧 元一の孤人焦点】落ちついて聞ける。これまでの中で最も、われわれ年配男性にしっくりくる音だ。静かだが、情緒的で、多彩。最新アルバム「フォークロア」はテイラー・スウィフトの最高傑作かもしれない。

 関係者によると、米・ビルボードのアルバムチャートで3週連続1位。現時点でのセールスは、全世界でフィジカル(CD、レコード、テープ)、DL、ストリーミングを合わせて200万ユニットという。

 10曲目の「イリシット・アフェアーズ」が良い。切ない声で歌うバラード。歌詞には「禁じられた関係」である相手への強い思いが表れていて、「あなたのためなら私は身を滅ぼしても構わない」と歌う。

 16曲目の「ホークス」が胸に響く。低くて渋みのある声で歌い出すスローナンバー。途中から、美しいハーモニーがかぶさってくる。「他の色合いのブルーなんて要らない。あなたの青だけでいい」。その熟成した歌声を聞いていると、テイラーも大人になったんだ、と感じる。気がつけば、彼女は30歳になっていた。

 その姿を初めて目にしたのは、2010年の第52回グラミー賞授賞式の生中継(WOWOW)だった。当時、20歳。2作目のアルバム「フィアレス」が、主要部門の中で最も価値がある「最優秀アルバム」に輝くなど4部門で受賞した。当時は20歳での最優秀アルバム受賞は史上最年少。テイラーが名前を呼ばれた瞬間に絶叫し、受賞あいさつで「年を取って、何度も孫に話すことになるでしょう」と興奮気味に話す姿が初々しかった。

 2016年の第58回グラミー賞授賞式では、5作目のアルバム「1989」で、女性アーティストとして初めて2度目の最優秀アルバムを受賞。あいさつで「全ての若い女性に言いたい。世の中には、あなたの成功を邪魔する人たちがいる。でも、雑音に惑わされず、やっていることに集中してほしい。いつか成功して周囲を見渡せば、大事なのはあなた自身と支援者だと分かる」と話す姿は6年前と違って堂々としていた。

 8作目となる「フォークロア」も批評家の評価が高く、早くも、来年のグラミー賞候補としてとりざたされている。3度の最優秀アルバム受賞は過去にスティーヴィー・ワンダーが成し遂げているが、テイラーが来年、受賞すれば、女性アーティストとして初めてとなる。

 一つ心配なのは、テイラーが今年、グラミー賞授賞式を欠席したことだ。本人は理由を明かしていないが、賞の主催団体が差別体質であることへの抗議の表れだったとの報道もあり、それが事実ならば来年の動向も微妙となる。

 ぜひ、「フォークロア」で3度目の最優秀アルバム受賞を達成してもらい、受賞あいさつを聞きたい。今度は、このアルバムのように、大人の女性らしい深みのあるものになるに違いない。

 ◆牧 元一(まき・もとかず)1963年、東京生まれ。編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴約30年。現在は主にテレビやラジオを担当。

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