【内田雅也の追球】6月に発した阪神・岡田監督の警告 勝ちまくった5月はもう過ぎた

[ 2023年6月2日 08:00 ]

交流戦   阪神2―4西武 ( 2023年6月1日    ベルーナD )

<西・神>3回、併殺打に倒れた佐藤輝(撮影・岸 良祐)
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 敗戦後、会見を終えた阪神監督・岡田彰布はバスに乗り込む直前、「ずるずるいくよ」と言った。「このまま負け続けるぞ」とも言った。

 チーム全体に向けて注意をうながし、警告を発しているのだ。そんな嫌な負け方だった。

 前夜、大型連勝が止まり、再スタートの一戦だった。ただ、どうも歯車がかみあわない。打線がつながらなかった。

 問題は5回までの拙攻である。相手西武の先発は今季初登板、プロ初先発の宮川哲で制球は乱れていた。5回まで5安打を放ち4四球を得ながら1点しか奪えなかった。3併殺など好機で「あと1本」が出なかった。

 1回表は1死一塁でシェルドン・ノイジーがボール球を振って三振、中野拓夢二盗憤死で併殺。2回表は1点先取後、2死満塁で得点圏打率リーグ首位・488(5月31日現在)の近本光司が一ゴロに終わった。

 3回表は1死一、二塁で佐藤輝明が一ゴロ併殺打に倒れた。驚くことに佐藤輝の併殺打は今季49試合目にして初めてだった。昨年7月1日の中日戦(バンテリンドーム)以来、併殺打なしを続けていた。フライボールヒッターということもあるが、凡ゴロでも疾走し併殺を免れていたのだ。この夜の一ゴロも引っ張った強い打球で、一塁は間一髪だった。

 4回表は1死一塁で木浪聖也が二ゴロ併殺打に倒れた。

 もちろん、以前も書いたように、岡田は「“打て”はゲッツーも含めての“打て”なんよ。“ゲッツーを打つな”なんていう指示や指導はない」と併殺打そのものをとがめてはいない。結果論なのだ。

 ただ、阪神のチーム併殺打はセ・リーグ最少の26。これまでは凡打の内容も良く、走者を進めるゴロなどが目立っていたのは確かである。

 6月である。米コラムニスト、ロジャー・エンジェルが<野球が本当にはじまるのは6月だ>と書いている=『憧れの大リーガーたち』(集英社文庫)=。<ただ天気がよくて、試合の経過を目と耳にするだけではすまなくなってくる。六月ともなると、あまり気のないセミ・ファンでさえ順位に目を向けはじめ><四月の壮大なのぞみを一部そっと取り下げる>。順位争いが本格化する大切な月なのだ。

 勝ちまくった5月はもう過ぎたのだ。だから、岡田は警告を発したのである。=敬称略=(編集委員)

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