【センバツ】誰も褒めない悲しき審判員 専大松戸戦で「神ジャッジ」下した審判団に拍手を…

[ 2023年3月27日 22:50 ]

第95回選抜高校野球大会3回戦   甲子園 ( 2023年3月27日    専大松戸6―4高知 )

<専大松戸・高知>9回(高)2死一塁、三振で試合を締め、雄叫びをあげる専大松戸・平野(撮影・大森 寛明)
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 2年ぶり2回目出場の専大松戸(千葉)が2年連続20度目出場の高知と対戦。6―4で勝利し、春夏通じて初の甲子園1大会2勝、ベスト8入りを果たした。

 最後までゲームの行方が予想できない熱戦の中で「究極のジャッジ」があった。専大松戸が2点差を追いつき、なお2回1死一塁の場面。打者・平野が投ゴロを放つと「1―6―3」の併殺を狙った投手が二塁へ送球した。

 だが遊撃手はベースカバーに間に合わず、二塁の後方にいた二塁手がボールをキャッチ。無人の二塁へ一塁走者が滑り込むと同時のタイミングで二塁手は一塁に送球。だが、送球は逸れて一塁側のカメラマン席に入り込み「ボールデッド」となった。審判団は協議の末、一塁走者を本塁へ、打者走者を二塁へ進塁させた。

 11年から16年までNPB審判員を務めた私が、(1)適用された規則。(2)下された判定。(3)ジャッジの正誤の3点から解説したい。

 (1)適用された規則。公認野球規則5.06b(4)(G)
 2個の塁が与えられる場合―送球が、スタンドまたはベンチに入った場合。(略)打球処理直後の内野手の最初のプレイに基づく悪送球であった場合は、投手の投球当時の各走者の位置、その他の場合は、悪送球がなされたときの各走者の位置を基準として定める。

 (2)下されたジャッジ。
 今回のプレーは悪送球がなされた時の各走者の位置から2個の塁を進塁させることが正しいジャッジとなる。審判団は協議の末、二塁手が一塁に送球した時(リリースした時)、一塁走者は二塁に達していたと判断。二塁を基準として2個の塁を進塁させて本塁生還。一塁に向かっていた打者走者を二塁へ進塁させた。

 (3)ジャッジの正誤。
 今回のジャッジは完璧だった。いや、人間離れした神業ともいえる。一塁走者が二塁に到達したタイミングと二塁手が一塁へ送球したタイミングはほぼ同時だった。ストップウォッチで手動計測すると0秒11だけ一塁走者の二塁到達が速かった。「アウト」か「セーフ」かに目が行きがちなプレーの中で審判団は「0秒11」の差を見切り、見事に正しいジャッジを導き出した。

 今大会の審判団の働きぶりは素晴らしい。開幕戦の東北―山梨学院戦では「ペッパーミル騒動」が話題になったが、相手選手の失策の時にパフォーマンスを行った選手を注意したことは正しいアンパイアリングだったと思う。一部には審判団への批判的意見もあったが、私が現場の審判員でも同じように注意を行っただろう。アマチュアでもプロでもマナー違反は注意されて当然だ。

 そして今回のプレーではNPBの「リクエスト」のような映像のサポートなしで「0秒11」の差を見切った。誰にも褒められない審判員たちに拍手と「ナイスジャッジ」の声を送りたい。全試合終了まであと11試合。もうひと踏ん張りだ。
(アマチュア野球担当・柳内 遼平)

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2023年3月27日のニュース