【内田雅也の追球】“心残り”の送りバント 12球団最少、大事な場面で決め切れぬまま迎える本番

[ 2023年3月27日 08:00 ]

オープン戦   阪神2―5オリックス ( 2023年3月26日    京セラD )

<オオ・神>7回、送りバントに失敗する小幡(撮影・岸 良祐)
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 最後のオープン戦で残念だったのは2度の送りバント失敗である。

 一つは投手の才木浩人だった。2―3と1点を追う5回表無死一塁で3球ともファウルのスリーバント失敗(三振)に終わった。指名打者(DH)を使わず、投手を打順に入れて3試合目。投手の打席で初めて迎えるバント状況は、チームにとって待望の場面だった。

 DH制のないセ・リーグで投手のバント成否は勝敗に直結する。21日の西武戦(ベルーナ)では投手の西純矢をDHで9番に入れた。異例のオーダーは本番想定だった。監督・岡田彰布は「投手にバントをさせたかったんや」と意図を説明していた。結果は走者ありで打順が回らなかった。

 だから、この日試合後、岡田は「せっかく初めてバントできるチャンスやったのにのう」と嘆いた。「バントは決めて当たり前の部分があるから。ピッチャーなんか特に自分にかかってくることやから」。投手のバントは自らを助ける。

 もう一つの失敗は小幡竜平。2点を追う7回表無死一、二塁でのバントを上げ、捕邪飛に終わった。バント失敗で好機を生かせなかった。

 これで阪神はオープン戦全17試合を終え、犠打はわずかに1個だった。11日の日本ハム戦(甲子園)で小幡が三塁前に決めたバントだけだ。犠打1は巨人と並び12球団最少である。巨人はバントを使わぬ打線のようだが阪神は違う。

 全試合を見てきた印象とすれば、ベンチのサイン(作戦)を採り入れてから、バントの場面は少なかった。だから犠打数が少ないのはわかる。

 それでも大事な場面でのバントが決め切れていない。たとえば21日の西武戦で0―0の5回表無死一塁、熊谷敬宥がバント失敗(ファウル)で追い込まれた後、バスターエンドランに切り替えて二直併殺となった。快打正面で不運だが、その前にバントで送れていれば続く近本光司の右前打で先取点を奪えていた。

 岡田は会見で「得点数はトップよ」と記者団に披露した。確かにオープン戦72得点は12球団最多だ。前日書いたが1試合平均四球も最多だ。

 得点力向上の一端が見えるのは喜ばしい。一方で犠打1は12球団最少である。接戦で生きるバントができずに本番を迎えることになる。この点が残念と言うより、心残りである。=敬称略=(編集委員)

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