ロッテ・朗希は「MLB最強右腕」デグロムに匹敵 重なる投球スタイル

[ 2022年6月17日 05:30 ]

ロッテ・佐々木朗希
Photo By スポニチ

 プロ野球史上最年少で完全試合を達成するなど、3年目で大ブレーク中のロッテ・佐々木朗希投手(20)。現役大リーガーと比べると、どの程度のレベルなのか。パドレスのダルビッシュも認めた「プロウト(プロの素人)」評論家・お股ニキ氏は、18、19年サイ・ヤング賞の「現役最強右腕」ジェイコブ・デグロム投手(33=メッツ)に匹敵すると評価した。その理由とは――。(取材・構成 大林 幹雄)

 デグロムは過去4シーズンで2度、サイ・ヤング賞を獲得。今季は右肩の不調のため出遅れているが、1メートル93の長身から100マイル(約161キロ)前後の直球と、91、92マイル(約146~148キロ)のスライダー、同程度の球速でシュート気味に落とすチェンジアップで圧倒する。お股ニキ氏は4月10日の完全試合に象徴される佐々木朗の投球スタイルと、この右腕を重ねた。

 「フォークはスライド気味に落としたり、シュート気味に落としたり、落差にも変化をつけてカウントも取れる。だから3球勝負もできる」。デグロムが左右に曲げる軌道を、佐々木朗はフォークの投げ分けによって生み出しているという。

 投げ分けの中でも、特に優れていると指摘するのは「スライドフォーク」と呼ぶ、140キロ台後半でスライダーにも見える軌道で落ちる球だ。サイドスピン(横回転)のフォークと違って「回転軸が少し右下向きのジャイロ回転」がかかり、あまり空気抵抗を受けずに速く届き、打者には手元で鋭く曲がり落ちる印象を与える。「160キロ以上の直球にも合わせないといけないし、速いまま曲がり落ちるので、泳ぎながら(体を)残して当てることもできない。対応不能な魔球」。昨季の大谷のスプリットも同様の軌道が多く見られ、お股ニキ氏は「最強スプリット」と称している。

 ただ、佐々木朗がシーズンを通じてローテーションで投げるのは初めて。軸になる直球の威力や直球、フォークの精度が落ちる場面に加え、相手打線の対応も見え始めた。そこで、前回登板の11日のDeNA戦ではスライダーを増やすことで幻惑し、8回を3安打1失点と好投した。

 「彼のスライダーは私がスラット(スライダーとカットボールの中間の性質を持つ球)と認定するようなタイプの球で、これまた優れている。今年は腕の振りとタイミングが合っていなかったのですが、前回はうまく投げられているように見えた」とお股ニキ氏。実際、昨季の被打率はフォークと同じ.097だった。また、「たまに入れるカーブも非常に効果的」と捕手・松川のリードも称賛する。

 今後に向けて増やすべき引き出しには、2点を挙げた。一つは「(3月27日の)楽天戦で西川選手に打たれてから、なくなった」という、左打者の内角低めに落ちる「バックフット」のスライダー。もう一つは、右打者への内角直球だ。

 しかし、現在の好調時のパフォーマンスは既に最高峰のレベルにあると強調。「メジャーの日程の厳しさとの比較や体力面を抜きにすれば」と前置きしつつ、「スピードも制球力も大谷選手以上。デグロムの良い時と互角かそれ以上。超人レベル。サッカーならメッシやC・ロナウドにもなれるような存在」と評した。

 ≪抹消明け22日視野≫現在、佐々木朗は出場選手登録を抹消中。今季2度目のリフレッシュで、井口監督は「抹消期間が明けたら行けると思っている」と、再登録が可能となる22日の西武戦(ZOZOマリン)の先発も視野に入れる。ここまで5勝を挙げているが平均球速が160キロ台から150キロ台に落ちるなど、疲労も見られた。3年目右腕も「まずはコンディションを整えたい」と、この期間を有効利用する。

 ▽ジャイロ回転 ボールの進行方向と回転の軸が一致した回転。アメリカンフットボールの球を投げた時のように、らせん状の軌道を描きながら打者へ向かっていく。右投手なら投手側から見て時計回り。進行方向と回転軸の一致度合いが高いほど空気抵抗が減り、初速と終速の差が小さくなる。

 ◇お股ニキ(@omatacom=おまたにき)本名、生年月日、出身地は非公表。「ニキ」はネット用語で「兄貴」の意味。本格的な野球経験は中学の部活動まで。15年にダルビッシュ(当時レンジャーズ)に関してつづったツイートが偶然、本人の目に留まったのをきっかけに親交がスタート。ツーシームを助言した際には「お股ツーシーム」として公認されるなど、「プロウト」としての道が開けた。球界で理論を取り入れる選手が急増し、4人のグループで開設したオンラインサロン(会員制ウェブサービス)にはダルビッシュ、千賀、東浜らを筆頭に、多くのプロ選手が加入。「セイバーメトリクスの落とし穴」(光文社新書)、「ピッチングデザイン」(集英社)などの著書がある。

続きを表示

この記事のフォト

2022年6月17日のニュース