巨人・阿部コーチ掲げる巻き返し3カ条 「正捕手」「ベンチワーク」「新戦力」

[ 2022年6月17日 05:30 ]

名古屋入りした阿部作戦兼ディフェンスチーフコーチ(撮影・河野 光希)
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 2年ぶりのリーグ優勝を目指す巨人において、原辰徳監督(63)を献身的に支えている阿部慎之助作戦兼ディフェンスチーフコーチ(43)がスポニチ本紙の取材に応じた。チームは12日まで行われた交流戦を8勝10敗と負け越し、2位ながら首位・ヤクルトと7ゲーム差。17日に再開するリーグ戦で巻き返すため(1)正捕手の台頭(2)ベンチワークの徹底(3)8、9月の戦い、をテーマに掲げた。(取材・構成 川島 毅洋)

 ディフェンスチーフコーチとして、もどかしさはある。大黒柱として起用が続いた大城が2日に再調整のため出場選手登録を抹消となった。自身の後継者育成が急務な中で、今季の主要テーマとして設定していた「正捕手の固定」が、前半戦の早い段階で崩れたのだ。

 「そういう存在(正捕手)が出ていないのは寂しい。信頼だったり、成績だったり、及んでいないというのは自覚しなければいけない。だから全員が(正捕手の座を)つかむチャンスはある」

 9日の西武戦で星稜時代は奥川(現ヤクルト)とバッテリーを組んでいた3年目の山瀬が初スタメンマスクをかぶった。「思ったより落ち着いてできていた。自分でどうアピールしていくか。山瀬はどういう捕手かというのを少しでも出せればね」と期待する。2軍監督時代から指導しているだけに「(捕手は)打たれたときの方が覚えているから、自分の引き出しにたくさん入れていくんだ」とアドバイスも送る。まだまだ粗削りではあるが伸びしろは大きく、チャンスをつかむことを望んでいる。

 今季から1軍コーチとなり、心掛けていることがある。「自分で気がついたことは(コーチや選手に)どんどん言う」ということ。めまぐるしく状況が変わっていく試合において、常に次のプレーを想定しながら指示を出すことを意識している。

 象徴的なシーンは4月3日の阪神戦。5―2の7回2死満塁で代打・ウィーラーが打席に立った場面で一塁コーチを務める亀井外野守備走塁コーチに指示を送った。一塁走者の小林に対し、際どい内野ゴロで二塁封殺をされないようにスタートを徹底させた。その直後、三遊間の深いゴロをさばいた遊撃手から二塁に送球されたが間一髪でセーフ。内野安打で追加点が入った。

 扇の要として広い視野を持っていた現役時代の経験は、指導者になっても生きており「気がつくことは言っておく。“ああ、言っておけば良かったな”ということがあまりないようにすることが、チームのためになる」と言う。最善の準備を徹底させるベンチワークを、シーズン最後まで貫く。

 交流戦は8勝10敗で10位に低迷したが、そこまでのリーグ戦は67試合で36勝31敗。主将で正遊撃手の坂本ら主力に故障者が続出した中で5つの貯金をつくっただけに「みんなの頑張り」と評価する。坂本不在の間に遊撃を守った中山、思い切りのいい打撃で一塁でのスタメンを勝ち取った増田陸ら若手も台頭。確実にチーム全体が底上げされている。

 「去年、陸は必死に、一番練習した。だから“練習はうそをつかない”ということを、今の2軍選手にも分かってほしい。中山も(1軍で経験していることを)自分の財産にしなければいけない。甘くはないと感じているだろうし、どう自分で考えてできるかだね」

 17日の中日戦(バンテリンドーム)でリーグ戦が再開。首位・ヤクルトと7ゲーム差も残りは76試合ある。阿部コーチは「原監督も8、9月が勝負だと思っている。そこでどう勝てるか」と語り「どういう負け方をするかも大事。全部、勝つのは無理だからね」と敗戦の中にも収穫を見いだすことを求めた。一プレー、一プレーの積み重ねが2年ぶりのリーグVへとつながる。原監督の参謀役として、チームが進むべき道を照らす。

 ◇阿部 慎之助(あべ・しんのすけ)1979年(昭54)3月20日生まれ、千葉県出身の43歳。安田学園から中大を経て00年ドラフト1位で巨人入り。12年に首位打者、打点王でMVPを獲得し、正力賞受賞。ベストナイン9度、ゴールデングラブ賞4度受賞。通算2282試合出場で2132安打、打率.284、406本塁打、1285打点。00年シドニー五輪、08年北京五輪、09、13年WBC出場。19年限りで現役を引退し20年から2軍監督、今年から1軍の作戦兼ディフェンスチーフコーチ。

 《1週間欠場も収穫》阿部コーチは2日のソフトバンク戦前に腹痛を訴えて腸炎と診断され、そこから1週間欠場。交流戦の最終カードだった10日の楽天戦からチームに合流し「峠は越えた感じ」と語っていた。静養中も映像で試合をチェック。まさかの離脱となったが「なかなかこういう機会はないから、いろいろと見えるものがあった」と今後の戦いに生かす構えだ。

 《大城が最多41戦》今季ここまでで巨人の先発捕手を務めたのは大城(41試合)、小林(19)、山瀬(4)、岸田(3)の4人。現在は大城が離脱しており、開幕戦で菅野とバッテリーを組んだ小林、岸田、山瀬の3人が1軍登録されている。競争心をあおることで全体的なレベルアップを狙う原監督は若い山瀬を起用した際に「いい風を吹かせた。岸田、小林、大城も、いろいろな意味で何かの材料になると思う」と語っていた。

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