「ロボット審判」でストライクゾーン“拡大”&捕手のフレーミング不要に?今季から3Aで導入へ

[ 2022年1月22日 05:30 ]

従来ならボールと判定されがちだったストライクゾーンをかすめる投球がロボット審判の場合は厳格にストライクと判定される可能性がある
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 大リーグ機構(MLB)が、ストライクの自動判定を行う「ロボット審判」を今季3Aで導入する方針であると20日(日本時間21日)、複数の米メディアが報じた。運用が成功すれば、メジャーで採用される可能性もある新システム。すでに独立リーグ、1Aで試験導入された「ロボット審判」による野球の変化について、元NPB審判員の柳内遼平記者(31)が分析した。

 「ロボット審判」により野球が大きく変わる可能性がある。18年からマイナーリーグの審判員を務める小石沢進(しん)さん(27)は昨年、1Aのロー・ウエストリーグで120試合に出場。先んじて「ロボット審判」を導入したロー・イーストリーグの審判員とも深い交流があり、大きな反響を実感した。

 厳格な「ロボット審判」のジャッジは、人間が目で判断してきた従来のストライクゾーンと異なる。「コースに関しては大きな変化はなかったが、低めのゾーン、特に縦に落ちるカーブが広くストライクとコールされるようになった」と小石沢さん。捕手が地面すれすれで捕球するような球でも、ゾーンをかすめれば「ストライク」。捕手のミットの動きなども考慮する人間の審判員なら「ボール」の球をストライクとされ、激高する選手が続出した。最初は球審に抗議していた選手は、次第にスタンド上部の機器を運用する部屋に向かい悪態をつくようになった。

 本格導入の場合、まず捕手の存在意義が大きく変わる。際どい投球をストライクに見せる「フレーミング技術」は不要。捕球よりも、盗塁を防ぐ肩の強さや送球技術、打力が重視される。ベンチが配球をまかなえば「頭脳のポジション」ではなくなる。投手は高低のストライクゾーン“拡大”で、縦の変化球の重要度が増す。主流の「動くボール」でゴロを打たせる投球より、スプリットを操るエンゼルス・大谷、「ユーファス」と呼ばれるスローカーブを持つパドレス・ダルビッシュら、落差の大きな変化球が得意な日本人投手には追い風だろう。

 ただ、小石沢さんは「妨害の判定や乱闘などトラブルを防ぐことも仕事。ゲームコントロールがプロの審判員として評価されるポイント」と語る。人間がプレーするグラウンド上の秩序を守るためには「人間以上の目」を持つ「ロボット」との共存が不可欠だ。(柳内 遼平)

 ▽ストライクゾーン 公認野球規則では「打者の肩の上部とユニフォームのズボンの上部との中間点に引いた水平のラインを上限とし、膝頭の下部のラインを下限とする本塁上の空間をいう。このストライクゾーンは打者が投球を打つための姿勢で決定されるべきである」としている。さらに見逃しストライクは「打者が打たなかった投球のうち、ボールの一部分がストライクゾーンのどの部分でもインフライトの状態で通過したもの」と定義されている。

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2022年1月22日のニュース