マー君 神の連投 160球敗戦翌日に志願「もやもやしていた」

[ 2013年11月4日 06:00 ]

<楽・巨>歓喜の輪をつくる田中(左から2人目)ら楽天ナイン

日本シリーズ第7戦 楽天3―0巨人

(11月3日 Kスタ宮城)
 雨の仙台の杜に歓喜の花が咲いた。コナミ日本シリーズ2013は3日、第7戦を行い、楽天が3―0で巨人を下し、球団創設9年目で初の日本一に輝いた。9回に第6戦で160球を投げたエースの田中将大投手(25)が救援登板。「日本ラスト登板」を無失点で締め、レギュラーシーズン、クライマックスシリーズ(CS)に続き3度目の胴上げ投手となった。星野仙一監督(66)も9度宙に舞った。楽天が東日本大震災からの復興途上の東北に歓喜を届けた。

 地鳴りのような「田中コール」、割れんばかりの大声援に背中を押された。3点リードの9回2死一、三塁。一発を浴びれば同点の場面。強くなった雨脚を切り裂くかのように、思い切り、強く、腕を振った。142キロのスプリットで代打矢野を空振り三振。両腕を突き上げた。嶋と抱き合った。三塁ベンチを飛び出したナインの波に倒された。日本一。3度目の胴上げ投手となった。

 「きのうは情けない投球だったので、自分自身もやもやしていた。だから出番をもらえるなら、いつでもいくぞ、という気持ちでブルペンで準備していた。この舞台を用意してくれたチームメート、ファンの方々に感謝したい」

 勝てば日本一だった第6戦で2点リードを守れず、プロ入り最多となる160球を投じて敗戦投手となった。その翌日の連投。疲労は極限だった。味方打線が序盤に先行し、美馬と則本が無失点でつなぐ展開。前日に12安打した相手の勢いをチームメートが止め、雪辱の舞台を整えてくれた。だから、1点たりとも与えたくなかった。

 前夜、第7戦について田中は「自分のできることをやりたい」と言った。この日は普段より1時間以上も早く球場入りし、マッサージを受けた。ノックを受ける際は「元気ある者から順番に並ぼう!」と一番前に立った。決してカラ元気ではなかった。本気の連投志願。先発マウンドに向かう美馬には「(第6戦で負けて)すみません。よろしくお願いします」と声を掛けた。9回のマウンドに向け、7回からブルペン投球を開始。何度も星野監督に「ほんまに大丈夫か?」と念押しされたが、決意は変わらなかった。

 昨年12月、田中は契約更改交渉で「将来的なメジャー挑戦」を球団に伝えた。すでに球団は田中が来季の大リーグ移籍を希望した場合、ポスティング・システム(入札制度)での移籍を容認する方針を固めている。だからこそ、魂と感謝をこめて15球を投げた。試合後、自身の去就問題については「今は答えないです。今はもうとにかく休みたい」とだけ話した。

 リーグ優勝、CS突破に続き、日本一もその右腕で決めた。歓喜の輪が解け、背番号18は周囲を見た。笑顔もあった。泣き顔もあった。このチームにいられてよかった。幸せだった。2013年11月3日。誰もが予想しなかったシナリオで「伝説」は完結した。「凄くホッとしました。最高のシーズンでした。ありがとう。日本一になったぞぉ」。チームに、東北に、優勝という最高の置き土産を残して海を渡る。

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