MVPの美馬 大仕事2勝 闘病中の母が退院その日に快投

[ 2013年11月4日 06:00 ]

<楽・巨>笑顔で握手する美馬(右)と星野監督

日本シリーズ第7戦 楽天3―0巨人

(11月3日 Kスタ宮城)
 運命の第7戦。第3戦に続いて、巨人打線の前に立ちはだかったのは身長1メートル69の楽天・美馬だった。そして今シリーズ2勝目。小兵右腕が、誰よりも大きい仕事を成し遂げ、MVPに選ばれた。

 「最高ですね。もう本当に出来すぎ。絶対に日本一になるんだという気持ちで、思い切り投げました」

 田中の不敗神話が崩れたことで、巡ってきた第7戦のマウンド。初回、味方の失策もあり、いきなり2死満塁のピンチを招いたが、坂本を中飛に打ち取って波に乗った。右打者にはシュート、左打者にはスライダーで内角を突く持ち前の投球で、6回を1安打無失点に抑えた。

 レギュラーシーズンは6勝止まり。学生時代に3度の手術を受けた右肘はシーズン中に何度も悲鳴を上げ、終盤には出場選手登録も外れた。ポストシーズンで登板できるかどうかも微妙な状況だった。それが、ロッテとのCSファイナルS第3戦(Kスタ宮城)でプロ初完封を達成すると、ポストシーズン3戦3勝で計20回2/3を無失点。これ以上ない活躍だった。

 原動力となったのは、茨城に住む母・明美さん(58)の存在だ。9月に内臓にがんが発見され、千葉県内の病院に入院。10月7日に大きな手術を受けた。数日後、右肘痛で2軍落ちしていた美馬は休日を利用して見舞うと、わずか数カ月で体重が激減した姿に衝撃を受けた。元気づける言葉も出ない息子に母は言った。「お母さんも頑張る。だから、学も頑張って」。逆に勇気づけられた。涙をこらえるのに必死だった。

 明美さんは手術後も予断を許さない状況が続いた。第7戦にもつれることが決まった前夜、美馬は「あしたはテレビを見られる体調ではないかもしれないけど、好投で母を元気づけたい」と語った。決戦のこの日、明美さんが退院し、茨城の自宅に戻ったという朗報が届いた。球場入りした美馬は「テレビも見てくれると思います」と笑顔で話していた。母のためにも絶対に勝ちたかった。

 闘病中の母に贈った好投がチームを日本一に導いた。闘将の就任と同じ11年入団の「星野チルドレン」。歓喜の夜。美馬が最高の輝きを放った。

 ◆美馬 学(みま・まなぶ)1986年(昭61)9月19日、茨城県生まれの27歳。藤代2年時のセンバツに出場して3回戦敗退。中大では4年春に2部優勝に貢献しMVP獲得。09年に東京ガスに入社し、2年連続都市対抗野球8強入り。10年ドラフト2位で楽天入り。通算64試合で16勝16敗、防御率3・45。1メートル69、75キロ。右投げ左打ち。

 ≪同一シリーズで10回以上無失点は5人目≫美馬(楽)が6回無失点で今シリーズ2勝目。初出場で2勝は08年岸(西)以来になる。美馬は第3戦と合わせ、今シリーズ11回2/3を投げて無失点。同一シリーズで10回以上を無失点は
08年岸 孝之(西)14回2/3
04年石井 貴(西)13回
66年益田昭雄(巨)12回
13年美馬 学(楽)11回2/3
97年石井一久(ヤ)11回
 美馬が5人目。初出場の投手では岸に次いで2人目となった。美馬はCSファイナルS第3戦で完封勝利。今ポストシーズン20回2/3を無失点で切り抜けた。

 ≪1メートル60台では初≫美馬がシリーズMVPを獲得。過去のシリーズMVP選手でもっとも小柄だったのは、74年弘田(ロ)の1メートル63。投手では75年山口(阪急)の1メートル70が最も身長が低く、1メートル60台では美馬が初めてだ。

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