マー君、魂の15K「勝たなければならない理由あった」

[ 2011年5月21日 06:00 ]

<楽・ヤ>9回、最後の打者・青木を一ゴロに抑え雄叫びを上げる田中

交流戦 楽天2-1ヤクルト

(5月20日 Kスタ宮城)
 ここでの主役の座は譲るわけにはいかない。楽天・田中将大投手(22)が20日、3年連続で仙台で実現したヤクルト・由規投手(21)との投げ合いを制した。球団記録となる毎回の15三振を奪い、9安打されながらも1失点完投勝利で3勝目をマーク。仙台出身の由規も、故郷での凱旋登板に7安打2失点完投と力投したが、田中はそれを上回る気迫で143球を投げ抜いて貫禄の違いを見せつけた。
【試合結果】

 最後の打者・青木にはスプリットを引っかけさせた。一ゴロに仕留めベースカバーに入った田中は、ウイニングボールを手に雄叫びを響かせた。

 「僕もきょうはどうしても勝たなければならない理由があって。勝てて本当に良かったです」

 相手はここ仙台で3年連続の投げ合いとなった由規。ヤクルト・小川監督は東日本大震災で被災した仙台市で、地元出身の由規の復興登板を画策してきた。本拠地ながら敵軍のエースにも声援が飛ぶ異様なムード。仙台の盟主のメンツにかけ、絶対に負けられなかった。

 田中は「永井さんにきょう子供が生まれたので。勝ってウイニングボールを渡す約束をしていたので」と続けた。練習中に、誰よりも慕う兄貴分に第1子となる長女が誕生したことを聞いた。加えてチームは2連敗中で、敗れれば借金は5。さらに岩隈が右肩痛で抹消という今季最大のピンチ。「見ていて歯がゆかった。きょうは何としても絶対勝ちたかった」。

 田中自身過去4年間、ケガなく過ごせたのは1年目だけだ。「故障せず1年間投げるエースを目指す」と今季からフォームを改造した。脱力からリリースで一気に全力を込める新フォーム。故障防止が目的だったが体は以前より前に倒れ、リリースポイントが打者に近づく副産物を得た。自身3番目に多い143球を投げ、奪った三振は毎回で球団記録の15。「三振が多いのはいいけど球数も多すぎ」と苦笑いも、球威が衰えず投げ抜けたのは新フォームの完成形ともいえた。3者凡退は7回だけで星野監督は「悪かった。球数多く安打も許し甘いね。もっと自分を大切にしないと」と心配したが、それでも勝つ準備を積んできた田中の成果がしっかり出た。

 「今までは意識したけど今回は全然なかった。由規どうこうよりも自分のことだけ。勝って良かった」。ルーツは違えど、仙台を代表するエースの投げ合いを制した田中は素直に明かした。それほどチームは追い詰められていた。純粋に、自然体で勝利を求めるエースの姿勢こそ、快投の原動力だった。

 ▼楽天・佐藤投手コーチ(被安打9も15奪三振で完投した田中について)見ての通りです。イライラ、ハラハラ…。いいボールはいっているはずなのに…。

 <初の2試合連続2桁奪三振>田中(楽)が毎回の15奪三振。楽天では有銘が06年8月25日ロッテ戦で17三振を奪っているが、延長12回でマークしたもの。9回試合では田中2度、岩隈1度と過去3度あった13奪三振を抜いて球団新記録となった。田中は前回登板の13日ロッテ戦でも11奪三振。自身2桁奪三振は19度目だがシーズン2試合連続は初めて。また、楽天の毎回奪三振は06年6月25日ソフトバンク戦で一場が記録して以来5年ぶり2人目だ。今季はここまで52回1/3を投げ、両リーグ最多の55奪三振。田中の入団1年目からの奪三振率は9・47→8・29→8・11→6・91→9・46。今季はデビュー年以来となる1試合平均9個以上の奪取率復活を狙える勢いがある。

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