楽天・今江1軍打撃コーチが大事にする“選手の目線” 声のかけ方も選手ごとに工夫

[ 2023年7月18日 08:00 ]

ホームインした山崎剛を迎える今江打撃コーチ
Photo By スポニチ

 前半戦が終了し、記者が担当する楽天は3位と5ゲーム差の4位で折り返した。開幕直後から苦しい戦いが続いたものの、7月は11勝3敗と絶好調で、最大13あった借金も一気に4まで減らした。

 シーズン序盤の打撃不振は深刻だった。3・4月はチーム打率・205で、5月も同・216。5月26日には1、2軍の打撃コーチの入れ替えが発表され、今江打撃コーチが2軍から1軍に配置転換された。すると、6月のチーム打率は・249、7月は同・303と上昇カーブを描いた。配置転換との因果関係を具体的に示すのは難しいが、一定の効果をもたらしていることは間違いないだろう。

 今江コーチはPL学園からロッテに入団し、勝負強い打者として活躍した。05年と10年には日本シリーズでMVPを獲得。06年にはWBCの優勝にも貢献した。楽天にFA移籍後、19年限りで現役を引退し、育成コーチや2軍打撃コーチとして指導者としてもキャリアも積んできた。

 本人も全く想定していなかった配置転換。シーズン途中で立場が変わり「ファームとの一番の違いは、とにかく1軍は結果を出すこと。いかに選手が結果を出して点を取れるようにするか。それに尽きます」と強調する。

 選手と接する上で心がけているのが、現代っ子の気質に合った選手へのアプローチだ。「今の選手は頭ごなしに考えを押しつけるような接し方は絶対にダメ。まずは選手の意見を聞く。その上でこっちがどう考えているかを伝える。さらに“ちゃんと見ているよ”ということが伝わることも大事。そこができていないと、反発してしまうこともある」と力説する。

 現役を退いてからそこまで時間がたっていないこともあって、選手の目線で物事を考えるようにしている。「自分の中でまだまだ選手としての感覚は残っているので」。試合中、ネクストサークル付近で打席に向かう選手に声をかけている場面を頻繁に見かける。現役時代の豊富な経験をもとに、その打席での狙いや考え方、心構えなど、状況に応じてさまざまなアドバイスを送っている。

 「本当は何も言わずに選手たちが打ってくれるのが一番だけど。若い選手も多いので、意識的に声をかけるようにしている。もちろん選手によっては言い方やアプローチは変えていますよ。打席でスイングをかけることは本当に勇気が必要なんです。だからこそ、背中を押してあげたい。固くなりすぎている選手には、時には冗談を交えたりしてね」

 19年1月、視野が狭くなる目の病気(右眼球中心性漿液性脈絡網膜症)と診断された。まだまだ現役でプレーしたかったが、この年限りで現役引退に追い込まれた。いつまでもユニホームを着てプレーできるわけではない。身をもって経験しているからこそ「後悔してほしくないし、僕自身も後悔したくない。だから、声をかけ続けます」と今江コーチ。酸いも甘いも知る男の言葉だからこそ、説得力があるのだろう。(記者コラム・重光晋太郎)

続きを表示

「始球式」特集記事

「落合博満」特集記事

2023年7月18日のニュース