横田慎太郎という誠実で野球に愛された男「普通のことを大事にしたい」

[ 2023年7月18日 20:20 ]

2019年、引退セレモニーで胴上げされる横田慎太郎氏。笑顔がこぼれた
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 阪神で14年から6年間プレーし19年に現役引退した横田慎太郎(よこた・しんたろう)さんが18日午前5時42分、脳腫瘍のため死去した。28歳。鹿児島県出身。現役引退の原因にもなった脳腫瘍が昨年に再々発。治療を終えて今春から療養に入っていた。

 横田慎太郎ほど野球とそれに関わる人すべてに愛された男も珍しい。

 「奇跡のバックホーム」を成し遂げた2019年、阪神での引退試合。その瞬間、アウトにされた相手チームのソフトバンク2軍の選手たちまでも立ち上がってガッツポーズで横田を祝福した。

 鹿児島実では3年間、学級委員を務めた。野球部ではエースで4番の大スターだが、学校生活でも手を抜かず、偉ぶることなく、担任教師、クラスメートからの信頼も絶大だった。

 趣味は部屋の掃除。誠実の塊(かたまり)のような男だ。

 常に背筋をぴんと伸ばし、話すときは相手の目を真っ直ぐに見る。当たり前のことを一生懸命やるから横田を好きにならない者はいない。

 脳腫瘍に続き、脊髄の腫瘍の壮絶過ぎる入院治療から退院した後、早朝の散歩を日課とした。

 横田は「散歩中にお年寄りと交わす“おはようございます”のあいさつが凄く幸せ。普通のことがありがたい。大事にしたい」と穏やかな笑顔で話していた

 先輩、同僚からいたずら、ちょっかいを出され続けた「イジられ役」。一方、ビール20杯でも酔わない大酒豪でもあった。

 阪神の寮の部屋で、3歳上の中谷将大が弾くギターに合わせて歌ったり、騒いだ思い出を楽しそうに話す姿は普通の若者と変わらなかった。

 「2回も大きな病気をしてたくさんの人に支えてもらった。今度は世の人のお役に立ちたい」

 横田慎太郎という男は最後まで生きることに誠実に向き合った。そして多くの温かい価値あるものを残してくれた。
 

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