羽生 4回転半は北京で決める!成功お預けも異次元Vで五輪切符「皆のためにもかなえてあげたい」

[ 2021年12月27日 05:30 ]

フィギュアスケート全日本選手権最終日 ( 2021年12月26日    さいたまスーパーアリーナ )

男子フリーで華麗に演技する羽生(撮影・小海途良幹)
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 男子フリーが行われ、14年ソチ、18年平昌五輪連覇の羽生結弦(27=ANA)はSPに続きトップの211.05点をマーク。公式戦では自身初挑戦となった4回転半は両足着氷となり認定されなかったが、合計322.36点で2年連続6度目の優勝を飾り、来年2月の北京五輪出場権を獲得した。フリー、合計点とも非公認記録ながら自己記録に肉薄し、今季世界最高を上回った。会見では、94年ぶりとなる五輪3連覇を目指すことを初めて明言した。

 演技を終えると、羽生は凜(りん)とした表情で大歓声に聞き入っていた。戦国時代の軍神・上杉謙信を題材にした「天と地と」を今季初めて演じ切った。「正直、ホッとしている」。再び日本の頂に立つと、いろいろな感情があふれた。

 「正直、6分間練習前から泣きそうで。あと何回こういう景色が見られるだろう、とか。今までの頑張ってきたこととか。いろんなことを思い出した」

 逃げなかった。冒頭の4回転半に公式戦で初挑戦。緩やかな助走から一気に、鋭く舞い上がった。両足着氷でダウングレード(3回転半)判定となったが、転倒しなかった。序盤から激しく消耗しながらも、4回転サルコーなどは完璧に成功。王者らしい演技を見せたが、「自分自身が成功しきれてないジャンプを本番で使用するのは難しいと改めて感じた」と振り返った。

 絶望の淵からはい上がってきた。練習法を確立し、4回転半で立てるようになったばかりの11月、NHK杯前に右足首を負傷。プランが崩れた焦りに加え「早く跳ばないと体もどんどん衰えていくのが分かる」。ストレスがたまり、食道炎で発熱した。何もできない1カ月を過ごし、限界を感じた。「その時点でやめちゃおうと思った。正直これで良いんじゃないかな…」とも明かした。

 悶々(もんもん)とした中で、全日本が近づいた。会場入り前日の21日、一心不乱に4回転半を90分以上も挑戦。あと4分の1回転で回りきる状態となる手応えのジャンプを4発、跳べた。「せっかくここまで来たんだったら、やっぱ降りたい」。そして、決断した。「全日本ではやめられない。皆の夢、皆のためにもかなえてあげたい」と。

 4回転半を挑み続けた先に、北京五輪が待っている。「出るからには勝ちをしっかりつかみ取ってこれるように」。初めて明かした3連覇への挑戦に、何が必要かは分かっている。「北京五輪を目指す覚悟を決めた背景には、4回転半を決めたい思いが一番強くある。4回転半をしっかり成功させつつ、その上で優勝を目指して頑張っていきたい」。別々の夢が重なり合い、道ははっきりと見えてきた。

 ▽クワッドアクセル(4回転半) 6種類の4回転の中で唯一、成功者がいないジャンプ。国際スケート連盟が定める基礎点は最高の12.50点で、ルール改正により17~18年シーズンまでの15.00点から下がったが、ルッツの11.50点より1点高い。左足で前向きに踏み切るため、後ろ向きで踏み切る他のジャンプより半回転多い。18年11月のGPロシア杯でアルトゥール・ドミトリエフ(ロシア)が史上初めて挑戦。回転が足りずに3回転半扱いとなった。

 ◇羽生 結弦(はにゅう・ゆづる)14年ソチ、18年平昌両冬季五輪2連覇で国民栄誉賞を受賞した。昨年の四大陸選手権で初優勝し、男子初のジュニア、シニア主要国際大会全制覇。16年に世界初の4回転ループ成功。早大出、ANA。1メートル72。27歳。宮城県出身。

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