橋本大輝、完璧2冠!心と会場揺れても王座揺るがず

[ 2021年8月4日 05:30 ]

東京五輪第12日 体操 ( 2021年8月3日    有明体操競技場 )

<体操男子種目別鉄棒決勝>金メダルを掲げる橋本(撮影・会津 智海)
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 種目別決勝の鉄棒で橋本大輝(19=順大)が15・066点をマークし、7月28日の個人総合に続く2つ目の金メダルを獲得した。日本勢の同種目制覇は84年大会の森末慎二以来、37年ぶり。個人2冠も、同大会の個人総合と種目別つり輪を制した具志堅幸司以来。北園丈琉(18=徳洲会)は2度の落下があって12・333点で6位。平均台の芦川うらら(18=静岡新聞SBS)は13・733点で6位だった。

 最高の夏の締めくくりには、最高の着地がふさわしい。G難度「カッシーナ」やE難度「コールマン」などを決めた橋本が、勢い良く両手をバーから離した。後方伸身2回宙返り2回ひねりの降りは一歩も動かない。勝利を確信し、拳を突き上げる。日本勢37年ぶり個人2冠の表彰台。夢舞台での計18演技をミスなく完遂し、胸を張って君が代を歌った。

 「演技だけじゃなくて、国歌を歌って代表としての誇りを持っていこうと思った。この大舞台でミスなく18演技を出せたっていうことは、今後の体操人生に大きく生きてくる」

 橋本の前に、北園を含めて3人が落下する展開。「失敗が続いていてミスが多く、心配になった」。少しの不安で心が揺れ、演技中に江東区の会場が震度1の地震で揺れても、王座は揺らがない。予選、団体決勝、個人総合決勝も含めて今大会の鉄棒4演技全てトップで、ライバルを寄せ付けなかった。

 五輪史上最年少で制した7月28日の個人総合決勝。メダリスト会見を終えた深夜、実家に電話をかけた。普段は合宿先や試合会場から連絡をしない橋本だが、どうしても感謝を伝えたかった。「金メダル獲ったよ!」。スピーカーモードになった携帯電話から、金メダリストの声が家族の耳に届いた。

 多忙な両親に代わり幼少時から橋本をサポートしてきた祖母・久子さん(81)はこの日も、自宅でのテレビ観戦で熱い声援を送った。演技前は「頑張れ!頑張れ!」、演技中は「持て!持て!」、そして着地では「止まれ!止まれ!」と大興奮。表彰式を見届けると「凄い男になっちゃったなあ」と愛する孫を称えた。

 最高の演技を見せたい人がいた。体操界の頂点に君臨し続けた内村航平(32=ジョイカル)が、7月24日の予選の鉄棒で落下。予選後に橋本は誓っていた。「最高の色のメダルを、最高に似合う人にかけてあげたい」。言葉通りタイトルを射止めた19歳は、内村を超える五輪3連覇を目標に、新キングの道を歩む。

 「航平さんは何度も世界チャンピオンになっていて、僕は1段目を上っただけ。体操のチャンピオンといったら内村航平といわれていた。早く追いついて、超せるように頑張りたい」

 7日に20歳になる。10代最後の夏は、まぶしい輝きとともに記憶に刻まれた。「結果だけじゃなく、この大会を通して自分の成長を感じられた。10代最後に、いいプレゼントを自分から自分にあげることができた」。誰も予想できない進化を遂げる王者には、誰も予想できない黄金の未来が待っている。

 ≪強気コメントも魅力≫体操で個人総合と種目別鉄棒の2冠を達成した橋本は、美しい演技だけでなく、強気の言葉にも魅力がある。東京五輪での橋本のコメントを振り返る。

 ☆「世界に、僕の強さを知らしめてあげたい。鉄棒は一番Dスコアが高いのに、一番ミスしない種目になってしまった」(7月24日の予選で個人総合トップ通過後、決勝へ闘志全開)

 ☆「五輪のメンバーが毎回同じだと面白くない。3年後は熾烈(しれつ)な代表レースが待っている。世代交代させないようにしたい」(7月26日の団体総合で銀メダル。24年パリ五輪を見据えて)

 ☆「14.6点取れれば優勝と思ってたら(順大の)原田先生にそういう顔をしているのがバレて、“ちゃん とやってきな”と言われた。楽しんで一周一周、車輪を回していた」(7月28日、個人総合最終種目の鉄棒を4位で迎えた時の心境と、演技について)

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