稀勢、横綱ワースト更新8連敗 連日の金星供給 芝田山広報部長「この相撲では厳しい」

[ 2019年1月16日 05:00 ]

大相撲初場所3日目   ●稀勢の里―栃煌山○ ( 2019年1月15日    両国国技館 )

3連敗となった稀勢の里は支度部屋で無言を貫く(撮影・沢田 明徳)
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 横綱・稀勢の里(32=田子ノ浦部屋)が、引退が避けられない状況に追い込まれた。平幕・栃煌山(31=春日野部屋)にもろ差しを許し、反撃できずに寄り切られた。初日から3連敗で、昨年秋場所千秋楽から不戦敗を除いて8連敗となり、横綱のワースト記録を更新した。横綱審議委員会から「激励」を決議されて臨んだ場所で横綱らしい相撲が取りきれず、和製横綱は進退の決断を迫られることになった。

 活路を見いだすには勝利しか許されなかった一番で、稀勢の里は見せ場をつくれずに敗れた。左から踏み込んで頭から当たったが、左差しを封じられてもろ差しを許した。左下手投げで揺さぶられると踏ん張れず、棒立ちになって力なく土俵を割った。負け残りの土俵下では口を真一文字に結び、何事かを考えていた。支度部屋では3連敗の心境などについての質問を受けたが、2日続けて無言だった。

 またしても不名誉な記録を刻んだ。昨年秋場所は千秋楽で敗れ、九州場所は横綱としては87年ぶりとなる初日からの4連敗(不戦敗を除く)。さらに今場所で3つの黒星を加えた。貴乃花が99年名古屋場所12日目から同年九州場所初日までに記録した7連敗を抜き、単独ワーストの8連敗となった。勝つことを宿命づけられている横綱という地位を汚す結果となった。

 横綱らしからぬ相撲が続き、周囲の意見は厳しい。同じ二所ノ関一門の芝田山広報部長(元横綱・大乃国)は「稀勢の里という横綱の相撲になっていない。“今日は一発いくぞ”という目の光じゃない。横綱としてこの相撲では厳しいよ。誰にも勝てないのではと思ってしまう」と引退は避けられない状況であることを示唆した。引退か否かを決断するのは稀勢の里自身だけに、八角理事長(元横綱・北勝海)は進退についての言及はしなかった。4日目以降に土俵に上がった場合の修正点を問われると「体を動かすのは気持ちだから」と話した。

 17年夏場所から8場所連続休場。進退を懸けて臨んだ昨年秋場所では10勝を挙げて引退危機を脱した。だが、九州場所では1勝もできなかった。場所後の横綱審議委員会では「激励」が決議され、今場所は休場が許されない状況だった。選択肢は「引退」か「出場」か。取組後は東京都江戸川区の田子ノ浦部屋に戻った。滞在時間は約1時間半。師匠の田子ノ浦親方(元幕内・隆の鶴)と何らかの話し合いをもったもようだ。

 冬巡業を全休した間は体づくりに重点を置き、番付発表後は前へ攻める意識で稽古を続けた。「順調に来ている。思い通りに近づいているというのがある」。自分に言い聞かせるように前向きな言葉を並べる中で「やってみないと分からない」と話したことがあった。進退が懸かる場所で、それが現実となってしまった。

 ≪大乃国以外は休場か引退≫ 15日制が定着した49年夏場所以降、初日から3連敗以上喫した横綱は6人で8度目(不戦敗は除く)。88年の大乃国を除き、いずれも途中休場と引退に追い込まれている。また、昨年秋場所千秋楽から不戦敗を除き8連敗となり、貴乃花と並んでいた横綱のワースト記録を更新した。

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