「鎌倉殿の13人」比企能員・佐藤二朗が語る三谷脚本の魅力「誰にも渡したくない台詞」あの“名言”も一例

[ 2022年8月14日 08:00 ]

大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第28話。鎌倉御所・寝殿。“13人衆”による評議は一向にまとまらない。居眠りする安達盛長(野添義弘)を起こす比企能員(佐藤二朗・左)(C)NHK
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 後半に入り、さらに一息つく間もない展開が続くNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」(日曜後8・00)。俳優の佐藤二朗(53)演じる“13人衆”の1人、比企能員と北条家の最終決戦が迫ってきた。唯一無二の存在感を発揮している佐藤に、三谷幸喜氏(61)の脚本の魅力を聞いた。

 <※以下、ネタバレ有>

 稀代の喜劇作家にして群像劇の名手・三谷氏が脚本を手掛け、俳優の小栗旬が主演を務める大河ドラマ61作目。タイトルの「鎌倉殿」とは、鎌倉幕府将軍のこと。主人公は鎌倉幕府2代執権・北条義時。鎌倉幕府初代将軍・源頼朝にすべてを学び、武士の世を盤石にした男。野心とは無縁だった若者は、いかにして武士の頂点に上り詰めたのか。新都・鎌倉を舞台に、13人の家臣団が激しいパワーゲームを繰り広げる。三谷氏は2004年「新選組!」、16年「真田丸」に続く6年ぶり3作目の大河脚本。小栗は8作目にして大河初主演に挑む。

 佐藤演じる比企能員は、源頼朝(大泉洋)の乳母・比企尼(草笛光子)の甥にあたる武蔵の豪族。頼朝亡き後、13人の合議制に名を連ねた。2代鎌倉殿・源頼家(金子大地)の乳母夫を務め、頼家の側室となった娘・せつ(山谷花純)が嫡男・一幡を生むと、さらに台頭。頼家の跡継ぎをめぐり、北条との権力闘争は熾烈を極めた。

 第22回「義時の生きる道」(6月5日)は政子(小池栄子)が頼朝との第4子・千幡を産むと、能員と妻・道(堀内敬子)は能員の姪・比奈(堀田真由)を頼朝の側室にしようと送り込み、比企の地位の盤石化を画策(結果、義時の妻に)。「富士の巻狩り」と「曽我事件」を描いた第23回「狩りと獲物」(6月12日)は頼朝と万寿(のちの頼家)が討たれたとの一報に、比企の生き残りのため、源範頼(迫田孝也)を次の鎌倉殿にと焚きつけた。

 前回第30回(8月7日)は、所領の再分配をめぐり、能員は頼家と対立。実衣(宮澤エマ)を盾に、阿野全成(新納慎也)を焚きつけた。全成が頼家呪詛に手を染めたことが発覚したものの、能員は知らん顔をし「これは、もはや謀反」。八田知家(市原隼人)が全成を斬首した。打倒比企を決意した義時に詰問され、善児(梶原善)と挟み撃ちに遭った能員だが、頼家が病に倒れる悪運の強さを発揮。佐藤のヒールぶりがSNS上で大きな話題を呼んだ。

 したたかに手を打ち、幕府内で力を振るう一方、第23回は万寿が空中に放った矢が能員の右足に命中する一幕も。佐藤にしか作れない芝居の“間”が何度となく視聴者の爆笑を誘った。

 三谷作品にはフジテレビ「黒井戸殺し」、舞台「愛と哀しみのシャーロック・ホームズ」などに出演したが、三谷大河は初体験。歴史ファンも唸る“神回”連発の三谷脚本について、佐藤は「ちょっと言葉で表現できないような凄みがあるので、あまり言いたくはないんですけど、血を分けた兄弟を殺めたり、仲間を裏切ったり、非常に殺伐とした時代だからこそ見える人間の本質、腹黒さだったり、逆に優しさだったりを、コミカルさをまぶしつつ描くのは、本当に三谷さんにしかできないですよね。それに単純に、俳優として『この台詞は誰にも渡したくない。どうしても自分が言いたい』と思える台詞がいくつもあるのは、やっぱり素晴らしい脚本家。俳優の立場としては、それが言えますよね」と持論。

 誰にも渡したくなかった台詞。「たくさんありますけど、一番分かりやすい例で言いますと『表に出ろと言われて、表に出てよかった試しはない!』」と明かした。

 第28回「名刀の主」(7月31日)の冒頭、誕生したばかりの「13人の合議制」。常陸の御家人の土地争いについて評議はグダグダとなり、北条時政(坂東彌十郎)が「政(まつりごと)に私情を挟むんじゃねぇ」、能員が「どの口が、どの口が」と口論。興奮した和田義盛(横田栄司)が「表に出ろ!」と立ち上がると、能員は「表に出ろと言われて、表に出てよかった試しはない!」と言い返した。

 SNS上でも「名言w」などと大反響。佐藤は「この台詞には(善児役の)梶原善さんも、三谷さんに絶賛のメールを送ったらしいです(梶原は三谷氏主宰の劇団『東京サンシャインボーイズ』のメンバー)。確かに、表に出ろと言われて表に出ても、たぶんロクはことはないですよね。これは名言。もう絶対、自分が言いたいと思いました」と振り返った。

 今夜(8月14日)放送の第31回は「諦めの悪い男」。北条と比企の権力闘争も、いよいよ最終局面。能員を待つ運命は…。“名台詞再び”も期待される。

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