「おかえりモネ」永瀬廉&蒔田彩珠のオーディション選出が大成功「落ち着きの奥に」「うますぎないか?」

[ 2021年10月30日 09:00 ]

連続テレビ小説「おかえりモネ」第108話。亮(永瀬廉)と未知(蒔田彩珠)(C)NHK
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 女優の清原果耶(19)がヒロインを務めたNHK連続テレビ小説「おかえりモネ」(月~土曜前8・00、土曜は1週間振り返り)は29日、最終回(第120話)が放送され、完結した。脚本・安達奈緒子氏の丹念な作劇を具現化したのが、清原をはじめとしたキャストの繊細な演技。“もう1人のヒロイン”と呼べる「King&Prince」の永瀬廉(22)と女優の蒔田彩珠(19)はオーディション組。永瀬と蒔田が起用に応え、選考によるキャスティングは見事に成功した。

 <※以下、ネタバレ有>

 朝ドラ通算104作目。清原とタッグを組んだNHK「透明なゆりかご」などやテレビ東京「きのう何食べた?」などで知られる安達氏が手掛けたオリジナル作品。朝ドラ脚本初挑戦となった。タイトルにある「モネ」は主人公・永浦百音(ももね)の愛称。1995年に宮城県気仙沼市に生まれ、森の町・登米(とめ)で青春を送るヒロイン・百音が気象予報士の資格を取得し、上京。積み重ねた経験や身につけた技術を生かし、故郷の役に立ちたいと奮闘する姿を描いた。

 朝ドラ初出演となった永瀬が演じたのは、百音の幼なじみの漁師・及川亮。カリスマ的な漁師だった父・新次(浅野忠信)との関係に苦悩し続けたが、最後は自ら船を買い「どうよ、親父、オレの船だ!」と誇らしげに胸を張り、百音や未知(蒔田)らに見送られ、出航した。

 及川父子の葛藤を克明に描き、前半最大のヤマ場となった第8週「それでも海は」(7月5~9日)。この週の演出を担当した桑野智宏監督に放送時にインタビューした。

 永瀬の選考について、決め手の1つはモテ男という亮のキャラクターへの説得力。もう1つは12歳の時にジャニーズ事務所に入った永瀬が「アイドルとして、ずっと人前に立ち続けてきて、プレッシャーも背負ってきたからなのか、永瀬さんは普段からどこか落ち着いているんです。一方で、りょーちんは震災を経て自分のことよりも周囲の期待に応えることを優先してしまうところがあり、その姿はどこか同級生たちよりも落ち着いている。自分には、その落ち着きがりょーちんと重なって見えました。だからこそ、その落ち着きの奥に潜んでいるものが何なのか、視聴者の皆さんも気になるのかなと思います。それが第8週は初めて吐き出されるわけですから、この週の永瀬さん、りょーちんは凄く魅力的なんだと思います」と共通項を見いだした。

 第75話(8月27日)、新次が再び暴れたことを知った亮は自暴自棄になり、行方不明に。「オレ、もう全部やめてもいいかな?オレ、もう全部やめてぇわ。ごめん。オレ、やっぱモネしか言える相手いない」と百音からの電話で打ち明け、第79話(9月2日)、東京・汐見湯のコインランドリーで「違う。そういう意味じゃない。分かってんでしょ」「(『りょーちんのこと、かわいそうとか、絶対に思いたくない』と距離を置く百音に)それでもいい」と“告白”した。

 第98話(9月29日)、気仙沼に戻った百音に「地元のために、働きたかった?ごめん。綺麗事にしか聞こえないわ」「悪いけど、今はそう思ってる」と辛らつな“本音”。第116話(10月25日)、菅波(坂口健太郎)の言葉に感化され「「時々、オレより苦しそうなんだよね。やっぱ、何かにずっと縛られてきたんだろうなって、感じることがある。そういうのは、オレだから感じてやれんだよな。他のヤツには絶対分かんない。でもオレなら、みーちゃんが抱えてるもん、分かんなくても想像できる。それは、オレらだからだし。みーちゃん、心の底から笑えるようにしてやれんの、たぶんオレしかいない。いつか、笑えるようにしてやる」と未知の思いを受け止めた。

 最終回は、百音に「おかえり、モネ」と“タイトル回収”の大役。青年の心の揺れと成長を繊細に表現し切った。

 蒔田は子役から活躍。2012年、10歳の時に是枝裕和監督(59)が演出したフジテレビの連続ドラマ「ゴーイング マイ ホーム」で主演・阿部寛(57)の娘役。その後、是枝監督の映画「海よりもまだ深く」(16年)「三度目の殺人」(17年公開)、カンヌ国際映画祭最高賞パルム・ドールに輝いた「万引き家族」(18年公開)と起用され、是枝作品の常連となった。

 朝ドラ出演は16年前期「とと姉ちゃん」以来、5年ぶり。今回は百音の2歳年下の妹・未知を演じた。未知の愛称そのままのサブタイトルとなった第4週(6月7~11日)「みーちゃんとカキ」放送時にチーフ演出の一木正恵監督にインタビューした。

 「蒔田さんといったら元々、特別なオーラをまとっていますよね」と以前から注目。「朝ドラというフォーマットは、ヒロインたちの成長過程を視聴者の皆さんが見守って愛でていくのも醍醐味の1つなので、若手の中で演技力が突出している清原さんと蒔田さん、2人を揃えてしまうと正直『うますぎないか?』と思いました。ただ、今回は姉妹のストーリーも非常に重要な軸の1つ。ちょっとやそっとじゃない存在感を持つ人を妹役にキャスティングしたいと考えていました。オーディションはシンプルな設定しかないのに、どうして未知という人間のことが分かっているんだろうというぐらい、蒔田さんは完璧でした」と選出の決め手を明かした。

 「実際は役のイメージよりも明るい人ですが、役に入ると、凄まじい集中力。それでいて、佇まいは普通の人。何も演じていないように見えるのにビックリしました。演技者じゃなく、まるでドキュメンタリーの中から連れてきた人みたいに、ストンとそこにいる強さがあります。本当に怖いぐらいのうまさです」

 第15週「百音と未知」(8月23~27日)、第16週「若き者たち」(8月30日~9月3日)と百音をめぐる“四角関係”の恋愛模様が描かれ、SNS上で大反響を呼んだが、姉への嫉妬心や葛藤を体現し“今作初のヒール役”に。圧巻の演技を披露し、ドラマ中盤の盛り上がりの立役者となった。

 「なんで?りょーちん、ずっと頑張ってきたじゃん。高校卒業して、すぐ漁師になって。新次さんの代わりに、ずっとずっと頑張ってきたじゃん!なのに、なんで…なんで、いつまでもしんどい思いしなきゃなんないの?ちょっと良くなると、また何かあって傷つけられる。もう、気持ちボロボロだよ。逃げたいんだよ、ホントは。でも、逃げられないじゃん!だって、だって誰かが残んなきゃ!残んなきゃ…。謝んないでよ。ズルいよ。なんで、お姉ちゃんなの?」(第75話、8月27日)

 「(菅波に)すいません。姉はいません。出掛けました。昨日会いましたよね?ここで。地元の、島の。姉はあの人(亮)のところに行きました。分かりませんでした?何か、空気感じませんでした?あの2人は昔から通じ合って…!」(第76話、8月30日)

 「私は、私のやりたいようにやる。りょーちんのことも。ごめん、さっき聞いてた。コインランドリーで話してたの。もうどうにかなりそうで、ハラハラしちゃったよ。てか、姉のああいう場面見る妹の気持ち、察して。何あれ。りょーちん、誰のことも好きにならないとか。そんなこと、ホントに思ってんだったら、りょーちん、つらすぎる。なのに、お姉ちゃんは…正しいけど冷たいよ。私が側にいる」(第79話、9月2日)

 百音や菅波に八つ当たりしているようにも見えたが、第118話(10月27日)、未知の心の傷が明らかになり、「お姉ちゃん、津波、見てないもんね」をはじめとした、それまでの言動が反転した。

 「私…あの時…おばあちゃんを置いて逃げた。どう言っても、引っ張っても、おばあちゃん動いてくれなくて。海が見えて。1人で逃げた。その後、たぶん、大人たちが来て、おばあちゃんを助けてくれたんだと思う。でも…私は…絶対…自分を許すことはできない。ここで、自分が、何かの役に立てれば、いつか…」

 若手演技派の本領発揮。SNS上には「みーちゃん、お願いだから、もう自分を責めないで」「なんか今までのみーちゃんの台詞が全部違う意味にひっくり返った」「みーちゃん、ずっと十字架背負ってきていたんだね…モネに八つ当たりするわがままな甘えた妹だって思っていて、ごめんなさい。脚本恐るべし」などの声が相次いだ。

 “菅モネ”とともに“りょーみー”も今作を牽引。視聴者の感動を誘った。

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