上白石萌音 「カムカムエヴリバディ」ヒロイン 朝ドラへのあこがれがにじみ出る芝居

[ 2021年10月30日 13:00 ]

NHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」のヒロインを演じる上白石萌音(C)NHK
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 【牧 元一の孤人焦点】朝ドラで大切なことは何か?物語の面白さもさることながら、主人公を連日見たいと思えるかどうかだ。11月1日にスタートするNHK連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」。第1週の試写を見て、主演の女優・上白石萌音(23)に必要十分な魅力を感じた。

 日本でラジオ放送が始まった1925年から始まり、3世代の女性たちが紡いでいく、100年の家族物語。上白石が演じるのは、岡山市内の和菓子店に生まれる、初代ヒロイン・安子で、その娘となる2代目ヒロイン・るいを深津絵里(48)、孫となる3代目ヒロイン・ひなたを川栄李奈(26)が演じる。

 既に撮影を終えた上白石は「今回はヒロインが3人いるので、濃度も重みもスピードも全部、3倍という感じでした。朝ドラの歴史の中でも、けうな体験をさせていただいたように思います。毎シーンがハイライトのようで、それを丁寧に演じさせていただいて、とても勉強になりました。今回の学びが事あるごとに思い出されると思います」と感慨無量の様子だ。

 映画やドラマ、舞台、音楽など幅広い分野で活躍する人気者だが、この朝ドラのヒロインはオーディションで射止めた。

 「オーディションの手応えがなかったのに加え、しばらく連絡もなかったので、落ちてしまったものだと思っていました。なので、出演決定の知らせを聞いた時は本当に信じられない気持ちで、後でじわじわと、安子を演じられる喜びがこみ上げて来ました。祖父母にも電話で伝えたところ、『で、誰がヒロイン?』と聞かれました。しばらくピンと来なかったようです(笑)」と振り返る。

 朝ドラにあこがれたのは、2011年に「おひさま」を見たことがきっかけ。女優の井上真央(34)が演じたヒロインがテレビ画面の中で輝いていた。

 「毎日録画して、学校から帰って、見ていました。真央さんが演じた陽子先生に強くあこがれて、その思いを温め続けて来ました。毎朝15分で、みんなに元気を与えることができるのは、なんて素敵なことだろう。いつか、そんなことができる女優さんになりたいと思っていました。12歳の頃からの夢がかないました」

 上白石がなぜ朝ドラで魅力的に映るのか?それは、あこがれていた世界で実際に演技する充実感が表れているからだと思う。

 初登場シーンの安子は14歳の設定。演じる自身とは9歳の開きがあった。

 「当時の14歳は今の14歳とは違うと思うので、つかむのが大変でした。無垢(むく)で、人の目を気にしていない感じ、100%の感情で揺れ動いているようなところがあるのかなと思いながら演じました。『ピュアに』と思いながら演じるのはピュアじゃないので、そぎ落として、脚本に書かれているものをそのまま届けたいと思いました」

 語る笑顔はこの上なくまろやか。少女の頃に夢見たように、きっと、連日、視聴者に元気をもたらすだろう。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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