古舘伊知郎 トークライブツアーで「実況講談アントニオ猪木」

[ 2021年8月20日 08:55 ]

トーキングブルースで実況講談を披露した古舘伊知郎
Photo By 提供写真

 【牧 元一の孤人焦点】フリーアナウンサーの古舘伊知郎がトークライブ「トーキングブルース」全国ツアーを行っている。

 今月14日の東京・渋谷のさくらホールでは、プロレスで活躍したアントニオ猪木氏の半生をたどる「実況講談」を披露し、客席をわかせた。

 テレビ朝日のアナウンサー時代、新日本プロレスの試合を実況し、以来、猪木氏と交流。猪木氏が現在、闘病生活を続ける中で「猪木さんにはお世話になって来たので、応援したい」と、実況講談を企画した。

 講談に関しては、昨年12月のライブで韓国ドラマ「愛の不時着」を題材にしたものを披露しており、その際、準備段階で人気講談師の神田伯山に稽古をつけてもらったことを明かしている。

 実況講談のテーマは「アントニオ猪木の源流」で、1969年の対ドリー・ファンク・ジュニア戦から話がスタート。「安保の過激な闘争の風が吹く中、その世相を映すかのように、猪木は強大なアメリカンプロレス、当時のNWA世界ヘビー級チャンピオンに挑戦した」と説明しつつ、60分時間切れ引き分けとなった試合を実況風に語った。

 そこから時代を戻し、少年時代にブラジルに移民した話、現地で力道山にスカウトされた話を展開。1972年に新日本プロレスを設立し、74年にストロング小林との日本人対決に臨んだ話へとつなげていった。

 講談の中で広がる、唯一無二の言語世界。小林戦のジャーマンスープレックスホールドは特殊で、マニアの間で語りぐさになっているが、その状況に関して古舘は「まずは猪木の脳天が着地した。そして、小林の上半身が落下した。その衝撃で、アーチを描いていた猪木の足首、かかとの部分がさらに上がって、きれいな放物線のブリッジを描いた」と描写。小林戦を見たことがある人は、これを聞くと、その場面をありありと思い出すに違いない。

 同じ74年の大木金太郎戦を語り終えると、既に講談開始から30分が経過。「私、古舘伊知郎が実況デビューしたのは1977年。まだ遠い未来であります。もし、評判が良ければ、『実況講談アントニオ猪木』の後半はまたの機会に申し上げたいと思います」と締めくくった。

 古舘の過去のプロレス実況は、80年の異種格闘技戦の対ウィリー・ウイリアムス、82年の第1回IWGP優勝決定戦の対ハルク・ホーガン、85年の対ブルーザー・ブロディなど、激闘が多数。今回の講談は他人の実況を語り直したものだったが、自身が実際に実況した試合の場合はどのように再構築するのか、そこにどのような思い出話、裏話を入れていくのか、また別の面白さがある。プロレス好きの観客にとっては、トークライブの目玉になるだろう。

 ツアーは11月まで各地で続く予定。どこかの会場でぜひ第2弾を聴きたい。

 ◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。

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